中国外交記事2題中国外交に関する外国の新聞記事を中国国内に紹介する記事があって、大変興味を引かれたので、それについて少し。
邓小平 / ComerZhao1つめは、『環球網』に掲載の記事で、バングラデシュの『毎日星報』に12月25日に掲載された前バングラデシュ国連大使の書かれてものを要約したものです。米中関係に対する論評で、一言で言えば、アメリカ国債も大量に保有しているし、中国の安い商品を愛用しているアメリカ人も増えてくる等、中国が力をつけてきたので、アメリカの中国に対する影響力も減ってきているという内容です。
外国メディア:中国の台頭は米国の対中影響力を削いだ=より頻繁に米国に「ノー」と言えるようになった(環球網)
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。
もう1つは、『新華網』にあったもので、シンガポールの『聯合早報』に12月21日掲載の記事の転載です。
中国外交はなお「韜光養晦」を堅持する必要がある―シンガポール紙(新華網)
原文のタイトルは「中国 “後韜光養晦”外交引人矚目」(注目を集める中国の「ポスト韜光養晦」外交」です。「韜光養晦」とは鄧小平が打ち出した二十四文字指針の中の一つで、能力を隠して実力を蓄えろ(能ある鷹は爪を隠す)とでも訳せば良いのでしょうか。
(鄧小平の24字指針は「冷静観察,穏住陣脚,沈着応付,韜光養晦,善于守拙,絶不当頭」。冷静に観察し、足場を整え、沈着に対応し、能力を隠して好機を待ち、控えめさを保ち、リーダーとはならない、という意味。後に「有所作為」(やるべきことをする)が付け足された。:Chinanews注)1989年の天安門事件の影響で、中国が国際社会から孤立し、ソ連や東欧の共産主義国が崩壊し、共産主義そのものにさえ、逆風が吹いた時期に提唱されたものです。つまり、今は試練の時だから、耐えてひたすら牙を磨けというわけです。
原文タイトルには「“後”韜光養晦」とありますが、この「後」とは「ポスト構造主義」とか「ポストモダン」で使われる「ポスト」の意味です。つまり、もはや中国は豊かになり、国力も充分なのだから、もはや耐える必要はないのではないというもので、これについてはいろいろな方が意見を述べておられます。
この記事の筆者も「韜光養晦」時代には、近隣諸国は安心していられたが、最近の中国の強硬姿勢には皆注意を払っているとしています。そして、最後がなかなか面白く、アメリカが中国に出した難題は、ホワイトハウスでの歓待か、黄海で空母の世話のどちらかを選べというものだとしております。つまりアメリカは、胡錦涛訪米受け入れか、朝鮮半島問題の悪化かどちらかを選べと中国に迫っており、そして、勝者及びポスト韜光養晦の評価をするのはまだ早いと結んでいます。
現時点で明らかに中国を上回る力を持っているのはアメリカで、中国もそのことはよくわかっております。だからこそ、中国の望む国際社会のあるべき姿は、アメリカ一極の反対の、各国がそれなりの力を持ち合う多極化ということになります。
多極的成長に関する中国の見方(中国外交部ウェブサイト)
難しいのは、冷戦時代にもいろいろ問題はありましたが、少なくとも米ソのもとで、ある程度安定は保たれており、地域(民族)紛争は多発しておりませんでしたし、フセイン時代のイラクも人権侵害等がありましたが、少なくとも今よりは安全でした。
確かに多極化というのはそれぞれが自由になることを意味しているので、それ自体はすばらしいことだと思います。しかし、問題が起きたときに上に立つ調停者がいないということを意味しますので、紛争の当事者間で力のある方が有利になる可能性が高くなります。そうなれば当然緊張が高まるわけで、実に難しい問題です。
<過去記事>
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2008のチベットと2009年のウイグルは、すべて民族問題でした。