中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
温家宝が放送で災害地区を慰問、全国の聴衆と交流(実録)(中国新聞網)*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。
内容は大体想像がつくと思うのですが、現地の復旧は順調に進んでおり、これもみな、政府(共産党)と国民の支援があったこそだ、感謝しようというよいしょの番組です。
その部分だけだったら、別に私も興味がひかれることはなかったのですが、今年の中国の話題は何と言ってもインフレで、それも特に不動産はここ数年、バブルといっても良いような状態で、家(実際中国は大半がマンションなので、家と言っても実際はマンションの価格ですが)の価格に対する不満はかなり根強く、それらの言及の仕方がいかにも中国という感じでおもしろかったので、それについて少し。
もともとこのサイトの表題が「温家宝が放送で災害地区を慰問、全国の聴衆と交流(実録)」というもので、実際、どのようなやりとりが行われたかネット上で再現されております。そして、前半部は実際に災害にあった地区の方々と話をする形になっております。
ところが、話が「物価」にうつると、あらかじめ準備しておいた聴衆の質問を司会者が読み上げ、温首相がそれに答えるというパターンに変わっております。実際、司会者が不動産価格について政府のコントロール政策を聞くにあたって、「これはかなり敏感な問題のようだが」と付け加えており、それに対し温首相が「敏感な問題を避けてはいけない」と言ってから政策を述べている部分がありました。
なかなか面白いやりとりではあったのですが、だったら、これも一般聴衆に直で温首相と話をさせてみてはどうかというのが偽らざる感想です。また、司会者が「今年有人説“房価総理説了不算,総経理説了算”,您对此怎么看?」という面白い質問をしておりました。これは発音が似た「総理=温首相」と「総経理=(会社、特に不動産関係会社か?の)社長」をかけたもので、「首相がいくらいってもだめだが、社長が言えば何とかなると言っている」人がいるが、どう思うかと聞いていたわけです(答えは当たり障りのない政策の紹介でしたが)。
また、これも聴取の声を紹介する形で、司会者が質問していたのですが、政府は国民の幸福を増大させるといっているが、不動産価格だけでなく、医療費も高いし、幼稚園に入れるのも大変、北京では自動車購入抑制策がとられ、今後は車を買うのも難しくなるだろう、こんなに困難があるのだから何とかしてくれ、という意見を紹介しておりました。
これに対する答えが絵に描いたような一般論で、国民は憲法により自由を保障されているだの職業・民族が異なっても平等だのからはじまり、皆で改革開放政策を推し進め、生活水準を上げていこうという筋立てに。
温総理の最後の閉めが、「中央人民広播電台は私と大衆に互いに交流する機会を与えてくれた。実際一人の指導者として、心の中でいつも大衆のことを考えており、こうした交流はいつも行わなくてはならないと思っている。」でした。確かに、うまくできた構成で、如何にも大衆の声を聞いているような形になっておりますが、本当に大衆が関心がある問題は予め準備された声に答えただけでした。
本当に大衆が聞きたいと思っている、大衆の不満に対する具体的な対策については、これまでの政策の紹介や一般論で答える。ある意味、いつもの中国の回答のパターンですが、どこかの国の政治家のテレビや国会での何を言っているのか意味不明の答弁を聞くよりは、建設的な回答かと思えてしまうのはいろいろな意味で情けないことです。