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【ニセモノのニセモノなのだ】ニセ卵騒動の真相=詐欺業者とメディアの共犯関係―中国

2010年12月28日

中国といえばニセモノ大国。ブランド品のニセモノなんてネタはもう話題にすらならず。最近では巨大ニセガンダムが話題となりましたが、何より恐ろしいのがニセ食品。先日取り上げたニセワインなんてのもその一つ。健康被害があるやもなどと言われると、ビビってしまいます。

一方で、中国のみならず日本中を驚かせた段ボール肉まん事件がやらせだったなんて話もありました(参考リンク:「<中国食品>「段ボール肉まん」はやらせ!“大スクープ”のテレビ局が謝罪―北京市」レコードチャイナ、2007年7月19日)。テレビ局がスクープを取るために無理やり事件をでっちあげたという話。「いや、テレビ局がじかに取材できずやらせをしてしまったが、以前には本当に段ボール肉まんを売っている人はいたのだ」と反論する人もいますけどね。とりあえず「ニセ・ニセ食品事件」であったと言えるでしょう。

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画像は中国広播網の報道。ニセ卵。

で、今回はこれまた日本で一世を風靡した中国ニセ卵ネタについて。これもまた「ニセ・ニセ食品事件」的な要素が色濃い事件であると、中国中央電視台(CCTV)の報道番組「焦点訪談」が報じています。

まず最初にニセ卵について簡単におさらいを。

ニセ卵製造に熟練している業者は1日一人で1000個以上作ることができ、コストは本物の卵の10分の1で、卸販売価格は本物の2分の1。業者にとってはコストパフォーマンスがよい。ニセ卵は普通の卵と一見変わらないが、ゆで卵にして食べるとゴムのような食感で卵の味はしないという。

このニセ卵は、主に褐藻に含まれる多糖類の一種で、ミョウバンやゼラチン、でんぷんなども使われる食物繊維の一つであるアルギン酸ナトリウムが主原料である。卵の殻は炭酸カルシウム製としている。中国の専門家達は、こうした材料を使った食品を長く摂取すると、記憶力が減退したり、認知症などの症状を招く可能性もあると注意を呼びかけている。

<中国食品>初公開!ニセ卵の製造過程が明らかに―河南省

*ニセ卵の製法は2分55秒から。

と、ここまで克明にニセ卵作りの手法が明らかになっているのに、実際にニセ卵を買ったという人がいない。ネット掲示板には「ついにニセ卵発見!」みたいなスレがごろごろしていますが、有精卵をニセ卵と勘違いしていたりとかいうのばかり。

で、「ニセ卵って本当に存在するのかよ……」という空気が広がっていました。が、それが一変したのが2009年3月のこと。ニセ卵作りを教えていたという任永興が逮捕されたこともあって、「すごいぞ!ニセ卵はやっぱりあったんだ!」と再び盛り上がりました。さらにネットには「ニセ卵作り伝授します」なんて広告サイトがごろごろあることも拍車をかけています。

で、その謎に迫ったのが12月26日放送の「焦点訪談」の特集「ニセ卵の真相」。

記者はニセ卵の製法を教える業者に接触します。最初に会った業者は「今は材料がないから目の前で作れないけど、作り方DVDを売ってあげるよ。500元(約6000円)なり」というお話。次の業者は、どう見ても本物にしか見えない卵を2つ見せて、「片方がニセモノだよ。ふふふ。どっちだけ分かるかい?1200元(約1万4400円)で製法を教えてあげよう。

900元(約1万800円)まで値切った記者は製法を入手。で、その作り方ですが、上記参考リンクとYoutubeに掲載されているものと一緒。この3年、ニセ卵の製造には技術革新はなかった模様です。ただできたニセ卵は簡単にニセモノと分かる粗悪品。どういうことなんでしょう?

ここから専門家3人が登場。第一の専門家は北京化学工業大学の張軍営教授。この製法で本物そっくりのニセ卵は作れないでしょうと断言。最近は殻を先につくって、後で中身を注射するという新手法も編み出されたと噂されていますが、これも「穴を塞ぐの大変だよ?コスト高すぎでしょ?」と否定。

第二の専門家は朱宝利・元湖南省懐化市会同県食品薬品監督管理局副局長。同氏はニセ卵作りを教える業者は調査した経歴を持つ。上述の方法でニセ卵作りを教わったが、結局本物そっくりの殻はできなかったそうで。勉強中、ご飯を食べに部屋を開けたが、戻ってくると机の上の卵は本物そっくり、いや本物にすり替わっていたのだとか。つまりは作り方を教える業者が詐欺師だったというお話です。となると、冒頭にでてきた本物と見分けのつかないニセ卵を見せてきた業者は、おそらく2つとも本物の卵を見せて「片方がニセモノだよ……」とうそぶいていたんじゃないかと推測できます。

第三の専門家は孫樹侠・中国保険協会食物栄養安全専業委員会会長。ニセ卵の主成分となるアルギン酸ナトリウムはゼリーを作る際によく使われるもの(日本でも人工イクラとかアルギン酸ナトリウムで作るそうです)。ピータンっぽい感じにするならともかく、卵同様の味を再現することは不可能だそうで。と、ここでCCTV記者が煮た「ゆでニセ卵」をパクリと一口。「サクッとした食感で、ちょっとクラゲに似てますね」と一言。ま、さすがにニセ卵を気づかないまま、食べるということはなさそうだというわけです。最後に番組はニセ卵取り締まりをめぐる行政管轄の話になりますが、それは割愛するということで。

――――――――――――――――――――――――――――

2007年にニセ卵問題が盛り上がった時、「なんでこんなにまことしやかな情報が流れているのに、実際に買ったという人がほとんどいないの?」「映像を見る限り、ニセモノだってばればれなんだけど、本当に売れるの?」と半信半疑ながらも、「中国ならあるかも……」と流されておりました。

が、今回の番組でカチッとピースがはまった感じ。「コストが安く、簡単にニセ卵が作れる」「莫大な利益を上げることができる」という報道は、いわばニセ卵製造方法を教える業者にとっては宣伝のようなもの。そうした報道が流れれば流れるだけ、「おいらもニセ卵でチャイニーズドリーム、ゲットだぜ」という人間を増やすことになります。

また、中国パクリ問題を喜々として報じるのは日本メディアだけではありません。むしろ実際に買ってしまう可能性がある中国人消費者のほうが真剣に見るもの。ゆえにショッキングなパクリネタは中国のマスメディアにとってはなによりの「商品」です

詐欺業者とメディアの、いわば共犯構造がニセ卵問題を作り上げたのではないか。というのが今回の番組を見て感じたことです。

あ、最後に誤解なきよう補足しておきますが、「中国にはニセ食品問題などない。メディアが作り上げた虚構なのだ」などというつもりは毛頭ありません。ただ本当に儲かるニセ食品ならば、なるべく消費者に疑われないよう、なるべく情報を漏らさないように注意が払われているでしょう。それが明るみにでる時には、おそらく大きな健康被害をもたらしているはずです。例えばメラミン混入粉ミルクみたいにね。


*12月26日付「焦点訪談」の特集「ニセ卵の真相」。


(執筆者:Chinanews) Twitterアカウントはこちら
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 コメント一覧 (5)

    • 1.   
    • 2010年12月28日 23:26
    • 偽物へのこだわりと職人魂を感じさせるニュースだ。
    • 2.  
    • 2010年12月29日 06:46
    • 真面目に本物を作ってください。
      お願いしますm(_ _)m
    • 3. Chinanews
    • 2010年12月29日 17:31
    • >1さん
      すごい手の込んだ詐欺ですよね(笑)。で、騙された人も、ニセ卵で一儲けを考えていた人だからあまり強くは言えないという……。

      >2さん
      本物のニセモノを作ったよ!とかでしょうか……(笑)
    • 4. spot
    • 2011年01月06日 15:43
    • 本物の偽物・・・ガンモドキとかか?
    • 5. Chinanews
    • 2011年01月07日 11:21
    • >spotさん
      がんもどきって、雁の肉に似た味だからこの名前なんですね。知らなかったです。確かに「本物のニセモノ」ですね(笑)。

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