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誰が中国を汚染しているのか?2年間を費やした大規模調査「全国汚染源センサス公報」―中国農業コラム

2010年12月30日

汚染の犯人は誰か?全国汚染源センサスの結果と農業による面源汚染の深刻さ


Rainbow pollution / gambier20

少し前にはなるのですが、2月10日付けの新聞で、同日にあった食品安全委員会設立のニュースに続き、もう一つ目を引いたのは、環境保護部が発表した「第1回全国汚染源センサス公報」です。

これは2年間をかけて行われた大気、水質汚染に関する調査で、2007年12月31日を基準に、全国の主要な河川や湖沼を対象に主要汚染物質を調べたものです。同センサスには全国汚染全数調査というページももありました。

*当記事は2010年3月2日付ブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。

ニュース報道などによりますと、特に水に焦点を当てれば、その汚染物質はアンモニア窒素(173万トン)、重金属(900トン)、窒素(473万トン)、リン(42万3千トン)が主要なものになります。

2007 年に国家統計局が同年のCOD(chemical oxygen demand::化学的酸素要求量、これが多い程有機物が多く、水質が汚染されているといえる)排出量として出した1380万トンに対して、今回センサスの結果では同年のCOD排出量は3030万トンとされました。

この倍増以上の数字の変化は、今回センサスが農業排水、及び生活排水をスコープに入れたことによると説明しており、農業排水はこのうち1320万トンの起源となっているということです。ざっくり言うと、農業、工業、生活廃水が それぞれ3分の1くらいのCOD発生源となっているとのこと。

中国環境新聞網の記事では、経済成長の発展段階と汚染の進展度合いを比べ、普通の途上国に比べても経済成長のテンポより汚染の進み具合の方が速く深刻であること、またこれに伴い環境保護部が財政部などと協議して環境税導入を検討していることなどに触れられています。

自分の関心である三農問題(農業、農村、農民の問題)的観点から言えば、幾つかの新聞では農業起源の汚染も深刻である旨が強調されたことが注目されました。

工業における汚染がある一点の汚染源から大量の汚染物質が流れる「点源汚染」と呼ばれるのに対して、農業では化学肥料や農薬は全国の農地から流れ出るもので、これは「面源汚染」と呼ばれます。

今回のセンサスではこういった農業起源の面源汚染も対象に加えられ、その深刻さが取りざたされもしました。この点では農業部高官も引用されつつ、特に畜産業、化学肥料や農薬の過剰使用が問題を深刻にしていると指摘しています。

重要な政策決定はまずきちんとした現状把握からということで、このようなセンサス、モニタリング作業は意義あることだと思いますし、もう少し詳しいデータを知りたいところです。

自分の関わる仕事でも各地での農業排水の問題をより良く把握するためにモニタリング能力強化を目指しており、このような全国規模のセンサスのような大規模・スポット的なものに加え、より恒常的なモニタリング体制が整えられるようにしていければ良いなあと思います。

*以下、北京で考えたこと」2010年3月3日付け記事より。

汚染の犯人は誰か?(その2)全国汚染源センサス実施責任者が語る


今日初めて買いました「中国改革」という雑誌の2010年第3期に、昨日書いた環境汚染源センサスの弁公室主任、王玉慶さんが書いた文章がありましたので、続編としてお届けします。

最初に強調しているのは、このセンサスが中国における環境汚染源に関する真の意味で初めての大規模調査であったということ。また結果の中では、農業汚染源が4割以上とCOD排出の最大要因となっている点を最初に述べています。

これまで農業による面源汚はモニタリングがほぼ空白であったことを認めつつ、これまで環境統計に農業廃水由来のそれが入っていなかったと記しています。

それが工業、生活排水に続いてようやく注目を集めつつあることは、ここ数日お話を聞いた有識者の方の意見とも一致するところです。特に太湖における2008年の藻の大発生など、世論の注目を集める大きな汚染事件も、これら政府の関心を引くきっかけとなったでしょう。

王氏に拠れば、今回センサスの詳しいデータは、2010年末に向けて現在出版準備が進んでいるとのこと。こういうデータはなかなか入手困難な場合も多いですが、この出版に向けて情報公開に期待したいところです。

*記事についての情報や間違いなど教えて頂けると大変助かります!コメント欄か、メール(kinbricksnow●gmail.com、●を@に変えてください)でお願いします。

*当記事は2010年3月2、3日付ブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。




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