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家が買えない!都市民の悲哀と悪辣業者を描いた社会派ドラマ「蝸居」を見た―中国農業コラム

2010年12月29日

「蝸居」と中国不動産(バブル?)

ここのところ大変はまってみていたTV「蝸居」を見終わりました。35話にわたるお話でしたが、面白くてあっという間に見てしまいました。そして、このTVドラマは今年の中国でも最も話題になったドラマと言って間違いないでしょう、特に今年後半はこの蝸居という言葉が何度も新聞・雑誌の紙面を飾りました。個人的にかなり「ヒットした」作品です。

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タイトルの蝸はかたつむりの意、居は家という意味で、まあかたつむりの家と言うか殻と言うかを意味するのですが、これは現代中国都市社会で住宅購入に苦労し、それによる経済的負担を一身に背負う様子を比喩したものです。住宅を買うという決断の中で、生活費をどんどん切り詰めていく姿は、華々しく語られる中国の経済成長とは違った、日本人にとってはある種の「親近感」さえ感じさせられる姿です。

*当記事は2009年12月30日付ブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。

かつては「ローンは組まない、日本人は何十年もローンを組んで心配でないのか?」と中国人に言われた頃は、恐らく90年代半ばだったんでしょうね。まだこれほど住宅購入やそれに伴う住宅ローンというものが普通でなかったです。とはいえ、ドラマの中でもまだ銀行というよりは「人から借りる」傾向が強かったですが。

ドラマの中でもしきりに住宅が騒動の焦点となり、それがゆえに翻弄される人生が、とてもリアル(に見える)な中国の都市住民の生活と共に描かれています。そして、中には官僚の汚職問題あり、地上げにより立ち退き問題ありと、都市で言われる社会問題満載のドラマで、フィクションではありつつも、何だかこういった問題に詳しくなったような気になりました。

このドラマ発では必ずしもありませんが、都市生活・住宅購入を巡っては色々な新語も。

「蟻族」:都会で4年生大学を卒業し、夢をかなえるために都会に残ったものの、良い仕事に就けず、低収入のまま家賃の安い地域にアリのように固まって住む若者「房奴」:住宅を買うためにローンを組み、それを返済するために「奴隷」のように働く人のこと「釘子戸」:立ち退きに最後まで徹底抗戦する家、人。やくざまがいの立ち退き要求に抵抗する場面では英雄的に扱われる場合もあれば、「プロ」の釘子戸もいて、そういう立ち退かされそうな人が雇う場合もあるとか。「二奶」:愛人

確かに、まだ都会の白領(ホワイトカラー)でも月給数万円の中で、マンションは平米辺り10~20万円(もちろん色々ありますが)と北京でもどんどん上昇傾向。国も歯止めをかけようと、投機的活動を抑えるための政策を、12月上旬の中央経済工作会議以降出していますが、まだそれはおさまらない様子。

27日に温家宝総理が新華社とのインタビューの中でやはり住宅価格の安定化について触れたことから、この価格高騰が収まるかどうかが注目されます。一方、12月27日法制晩報は日本のバブル崩壊と現在の中国の状況を比較、警鐘を鳴らしています。

中国でもかつて海南島や北海でこのような住宅バブルが起きていて、未経験ではないのですが、やはりバブル絶頂の当事者というのは気付きにくいものなのでしょうか。それとも、それを知りつつ住宅価格を押し上げる(必要のある)ディベロッパーの勢いがまだ優勢ということでしょうか。

特に今回のドラマではこれらディベロッパー(開発商)の動きがとてもよくわかって、そこらあたりがどういう風に地方政府に入り込んで、古い住居を立ち退かせて、どのように補償を行って、そして利益を得ているのか等等が、ちょっと大げさなところもあるのかもしれませんが非常にわかり易く描かれていました。

一般市民の間でも「どこかでバブルがはじけるのでは」と言うそこはかとない不安は広がっているようです。上海万博までと言う人もいれば、2012年という人もいてそこも予想の域を出ないのですが・・・。ドラマを通じてもなかなか学びが多いです。

*記事についての情報や間違いなど教えて頂けると大変助かります!コメント欄か、メール(kinbricksnow●gmail.com、●を@に変えてください)でお願いします。

*当記事は2009年12月30日付ブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。




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