中国の欧州外交
The Euro / dydcheungロイターによると、中国の李克強副首相は、4日から3日間の日程でスペインを訪問することになっておりますが、それに併せて、3日付のスペイン紙パイスに掲載された論説記事で、引き続き同国の国債入札に参加する考えを示したそうです。
中国、今後もスペイン国債の購入続ける─副首相=新聞(ロイター、2011/01/03)
これは昨年の11月に胡錦涛国家主席がポルトガルを公式訪問した際に、ソクラテス首相と会談後の共同記者会見で、ポルトガルを支援するために「具体的な措置」を取ると語り、中国によるポルトガル国債の購入を示唆したものに続くものとなっております。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。
これまた、ロイターですが、ポルトガルの日刊紙ジョルナル・デ・ネゴシオスは、昨年12月22日付けの記事で、中国が40億-50億ユーロ(53億-66億ドル)のポルトガル国債を購入する用意があると報じたそうです。
UPDATE2: 中国、40億─50億ユーロのポルトガル国債を購入する用意=ポルトガル紙(ロイター、2010/12/23)
同紙は情報源を明示しておらず、中国人民銀行及びポルトガル政府当局者の発言も得られていないということですので、かなり希望的観測による記事かとも思えます。しかし「報道を受け、ユーロが対ドルで上昇した」そうですから、中国(マネー)の影響力をまざまざと、見せつけられた感じです。
この昨年11月の胡錦涛国家主席の欧州訪問では、フランスとエアバス102機、ウラン35トンなどの購入契約を締結し、以前はチベット問題で、ダライ・ラマと会見までしたサルコジ大統領を黙らせております(胡錦涛訪仏)。イギリスもG20の際にキャメロン首相が日本を素通りして中国を訪問し、大量の契約を締結する等(イギリス首相の訪中)、ヨーロッパにおける中国の影響力はかなりのものとなっております。
おそらくこうした中国とヨーロッパの結びつきは両者の思惑があり、ギリシャ危機がいつ他国に波及するかわからず、資金を必要としているヨーロッパと、太平洋において近隣諸国とうまくいっていない中国が国際的に自国を支援してくれるパートナーを必要としているという面があると考えます。
実際、中国はここのところ、領土問題や北朝鮮問題等で近隣諸国と衝突を繰り返しております。日本とはいうまでもなく、昨年9月の尖閣諸島沖の中国漁船と日本の自衛隊巡視船との衝突事件で、この時の中国の強硬な態度は、日本にアメリカの重要性を再確認させただけでなく、南シナ海で中国と領土問題を抱えるASEAN諸国の懸念を高めることとなりました。
韓国との間では、昨年11月の北朝鮮による延坪島砲撃後の中国の北朝鮮よりの態度や、同年12月の黄海における中国漁船と韓国警備船との衝突事件などが両者の関係が悪化させました。特に砲撃事件については、これまた韓国にアメリカの重要性を再認識させることとなり、結果として中国の態度は、アジアにおけるアメリカの関与を強めるだけの結果となってしまいました。
こうした状況を打破するためにもヨーロッパとの結びつきを強めることは中国にとって必要であり、実際に資金を提供するかどうかは別として、中国がヨーロッパに対するリップサービスを欠かすことができない原因かと考えます。
また、温家宝総理が12月にインドを訪問しております。当然これは、中国とインドの国交樹立60周年という大儀がありましたが、この時、これまた国境問題を抱えるインドとの関係改善を殊更強調したのも、これ以上の近隣諸国との関係悪化を避けるという意図があったものと考えます。
<過去記事>
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