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2011年01月15日
国家発展改革委員会:中国は基本的に「第11期5か年計画」の省エネ目標を達成した(新華網、2011年1月6日)
6日、国家発展改革委員会の張平(ジャン・ピン)主任は、第11期5か年計画(2006年から2010年)の省エネ目標が基本的に達成されたことを明かした。目標は「2005年比で単位GDPあたりのエネルギー消費量を20%削減する」というもの。
中国電力業界は石炭消費量が多く、効率が悪い小型の火力発電所を閉鎖し、新型の大型発電所に切り替え。累計で3億トン以上もの石炭を節約した。また水力、原子力、風力などの非化石燃料の開発も進め、5年間で3兆キロワット時を発電。30億トン弱の二酸化炭素排出量削減に成功した。
5年間の累計での成果とはいうものの、2006年、2007年は有色金属などエネルギー消費が多い産業が「成長しすぎ」、単位GDPあたりのエネルギー消費量(1ドル分のGDPを生み出すのに、どれだけのエネルギーが必要かという効率性を示す指標)はむしろ悪化していました。これはまずいと思ったのか、2008年以後は毎年の統計が発表されなくなったように記憶しているのですが、見事な追い込みです(基本的という言い訳ワードがついているので、「だいたい達成できた」ということなのでしょうが)。
リーマンショックによる景気の冷え込み(工場の操業率が落ちればエネルギー消費量も下がる。本来ならばGDPも下がるですが、そこはそれ……)が「省エネ」の最大の立役者ではないかとにらんでいるのですが、それ以外に「突撃的電力供給制限」などの中国式豪腕も貢献していることは間違いないでしょう(「突撃的電力供給制限」とは、省エネ目標達成のために、工場の操業を禁止するなどの強引な措置を地方がとったこと。参考記事「エコが招いた「軽油不足」?!「突撃的電力供給制限」に に見る社会主義経済の凄まじさ―中国」)。
各地でさまざまな混乱があったようだが、最近話題となっているのが河南省安陽市林州市のスチーム停止事件。中国の北部では大型ボイラーから供給される熱水が各家庭に配分される暖房システムが普及している。このため家の中はびっくりするほど暖かいのだが、林州市の一部区画では突然、スチームが停止。マイナス10度の極寒の中、「今年はスチームを供給できない。許してね♪」と発表される異常事態に。
実は林州市では火力発電所の余熱を使ってスチームを提供していたのだが、省エネ目標実現のために発電所の操業が停止。かわりに鉄工所のボイラーを使うなどの代替策が講じられたのだが、必要な熱量が確保できずに暖房を提供できなくなってしまったのだという。5年も時間があったのに、最後の最後になってどたばたと省エネ目標達成のために突撃したツケが表面化したというところだろうか。
気になるのは、中国の地方官僚(この場合だと、林州市共産党委員会書記と市長)はなぜ省エネ目標達成に必死になるのかという点。地方官僚にとっては「経済成長を達成した」「省エネ目標を達成した」という業績が最大の目標であり、出世のために必要な材料。マイナス10度の寒さの中、住民を放り出すことになろうとも絶対に達成しなければいけない至上命題だからだ。
もっとも林州市の場合は、全国的にこの問題が報じられてしまったので、地方官僚には大きなマイナスとなったのではないだろうか。現在ではスチーム停止の方針を撤回。代替手段を摸索しているというが、どうなることやら……。独裁的な政治権力はいい面に向かえば、物事が早く決まるというメリットがあるが、失敗するととんでもない見落としや住民無視の決断をするというデメリットがある。林州市の問題は独裁的官僚制度の問題点の象徴とも言えるのではないだろうか。