胡錦濤訪米についてのクリントンン演説※ロイターの報道。以前、ある1つの物事があっても、それをどう見るか、どう報道するかによって全く違ったもののようになってしまうという記事を書きました(
温家宝首相のラジオ出演2)。クリントン国務長官が、14日に、中国の胡錦濤国家主席の訪米を控え演説を行ったのですが、この報道の仕方が大変興味深かったのでこれについて少し。
まずは中国共産党系の『
環境網』からですが、「アメリカは力をつくし、中国と共に21世紀における積極的で全面的な米中関係を建設していくことを強調した」となっております。記事の内容を一言でいうと、胡錦涛訪米によって米中関係がよくなることを期待します、だから、アメリカは胡錦涛訪米を歓迎しております、という感じの記事です。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。
『読売新聞』にも短い記事が載っていたのですが、関係部分を抜粋すると以下のとおりです。
米中関係、重大な岐路…米長官が協力追求へ決意
長官は、中国の台頭を「歓迎する」としながら、「グローバルな責任と義務」を共に担い、「現実の問題に確かな行動を取ろう」と呼びかけた。
特に東アジアの安全保障では、周辺国が「米国か中国かの選択を迫られる二者択一を望まない」と指摘した。
その一方、中国の軍拡についての情報開示を要求するとともに、北朝鮮の弾道ミサイル開発が「(米国の)安全保障問題になりつつある」として、中国に影響力の行使を求めた。
歓迎だけではなく、それ以外に苦言を呈したことが記事になっておりますが、その中でも、日本に関係する安全保障の面を特に強調して、記事にしております。
続いて『
ロイター』ですが、結構長い記事で、ある意味これが一番読み応えがありました。
報道のパターンとしては、米中関係の強化を期待すると共に、中国の問題点を指摘するという『読売新聞』と同じパターンになっておりますが、指摘されている問題点が、かなり異なります。『ロイター』では、貿易(為替、人民元問題)、地球環境温暖化、北朝鮮の核問題、ノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏の解放に代表される人権問題など、様々な問題に言及したことが触れられております。
まともに考えれば、すぐわかることですが、米中間の問題といった場合、アメリカにとって現在の最大の問題は貿易赤字の解消であり、それについてクリントン国務長官が言及しないはずがありません。しかし、『読売新聞』では、それ等についてふれておらず、あくまで日本に関係するであろう部分を記述するだけにとどめており、「特に」等という書き方をしているので、より誤解を招きやすい形になっております。
ついでだったので、
クリントン国務長官の全文を探して読んでみたところ、私的に大変面白かったのが彼女(アメリカ)の中国観でした。
彼女は、戦後の米中関係を以下のように概括しております。米中の外交が開始された当初はあくまでソ連に対抗するためだけのもので、具体的なものは何もなかった。それが90年代にはいると、アジアという地域の問題について共に関与しはじめ、現在ではそれが全世界規模に拡大した。なかなか的を得た分析かと思います。
それ以上に興味深かったのが、中国の経済発展に触れた部分で、彼女は中国が経済発展をして理由として、勤勉な国民、的確なヴィジョンを持った指導者を挙げております。しかし、それに続いて、開かれていてダイナミックな国際経済を挙げており、それを可能にしたのが、アメリカの力により、長いこと地域の安定が守られてきたからだと述べております。だからこそ、アメリカは中国の経済発展を歓迎するが、その分け前をもらえるとしております。
こういう所は、まず報道されないかもしれませんが、アメリカ(の政治家)が中国をどのように考えているが、大変参考になるものだと思います。こうしたものを読んでいて思うのが、アメリカの政治家恐るべきという感想で、それに引き替え日本の政治家は何と情けないのかということです。
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