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2011年01月16日
平頂山市中級人民法院での裁判によって描かれた筋立ては次のとおり。2008年5月、時建峰は偽造の武装警察ナンバープレートなどを入手。所有していたトラックに取り付け、道路使用料金を支払うことなく、砂利や砂の運送業務を続けた。2009年1月に逮捕されるまで、計2362回通行したと見られ、計368万元(約4000万円)の通行費支払いを免れていた。
しかし、15日、時軍鋒が語った筋書きはまったく違うものだった。時軍鋒が見せたのは1枚の契約書。問題の偽装ナンバープレートは武装警官を自称する張新田、李金良の2人と契約を取り交わして入手した物だという。契約書には以下の内容が書かれていた。
4台分のナンバープレートの代金として年120万元(約1500万円)を2人に支払う。うち24万元(約300万円)は「コネ協調費」の名目。もし道路通行料や過積載の支払いを求められた場合には武装警官の2人がその場におもむき解決する。もしなんらかの罰金が発生した場合は、武装警官側は負担する。またこれ以外に平頂山下湯道路通行料徴収所の所長、副所長に月5000元(約6万2500円)を支払う、というもの。
摇摇欲坠(Himalayan Mountains) / utpala ॐ
また、時軍鋒は巨額の金を支払ってまでも武装警察のナンバープレートを手に入れようとした動機を話している。目的地まで向かうまでに3カ所の過積載取り締まり地点があり、そのたびに1000元(約1万2500円)の罰金を支払わなければならなかったという。このほかにも交通警察による取り締まりや交通事故での賠償などの費用がかさんだため、巨額の金を費やしてでも武装警察のナンバープレートを使う価値はあったと話している。
そして、時軍鋒は武装警官2人と契約を結んだ「主犯」は自分だと主張。自首することで兄に科された無期懲役という刑罰を撤回して欲しいと話した。
時軍鋒の自首。そして世論の反発の高まりを受けてか、16日午後、河南省高級人民法院は証拠不足として一審に再調査を命じた。また一審判決を下した主任裁判官の婁彦偉を裁判官補佐の職位を剥奪するほか、第一刑事法廷廷長の任を解くこと、平頂山市中級人民法院にも訓告処分を与えることを発表した。
今後、一審の再審査によって事態が明らかにされることが期待されるが、時軍鋒の供述が正しければ、武装警察、そして道路料金徴収所を巻き込んだ汚職事件へと発展することになる。癒着がもし存在するとなれば、おそらく時兄弟だけではなく、他にも武装警察のナンバープレートを不当に入手した業者が存在する可能性が高い。今回の事件が、こうした汚職の構造を白日の下にさらす機会となるのか。今後の展開が注目される。