中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年01月17日
農村の各種の問題を現場を歩きながら究明しているこの学者は、最近は特に農村における土地権利関係での争い、特にその中での地方政府の荒っぽいやり方を糾弾しています。
中国で起きる「群体性事件」、つまり集団での(時に暴力を伴う)デモ・抗議行動などの事件は1996年に8790件であったのが2006年には9万件以上、一部での地域での政府と住民の緊張関係は相当に厳しいものになっています。そういった中で、于建嵘は学者としての研究に止まらず、ブログや微博などのツールで社会に訴えていっています。
現在彼は自らの研究を行うのみならず、その率直な発言に感銘を受けた地方政府などに赴いて、地方政府幹部向けの講演を数多く行っています。そこでも「お前ら官僚たちは」と政府官僚を罵倒するような口調も交えて講演するため、時には聴衆が怒って帰ることもあれば、その率直な物言いに更に関心を呼ぶこともあるそうです。
有名になった彼の下には農村から多くの窮状を訴える便りが来て、4,5万通上る資料を保管するためにわざわざある「黒材料」部屋と呼ぶ場所を借りているほど。
先日ありました「村長謀殺事件」(ニューズウィーク日本版「中国「村長謀殺事件」の大きな波紋」を参照)でもそうですが、ネット、ブログ、更にはツイッターのようなものが、農村における各種の問題点の「アジェンダ・セッティング」、問題点・議論の焦点を定める役割をしている様子、それを象徴するような于建嵘のような人物。農村の問題への接し方もどんどん変わってきています。
政府関係者のアカウントも多少ありますが、それよりも特に学者の微博アカウントには面白いものが多く、政府官僚よりももう少し自由にできる発言が、微博のような新しいメディアによって更に勢いを増しているのでしょう。
彼の存在感の大きさを知った「博客天下」誌のキャッチフレーズは「人人都是記録者」、中国でも、様々な規制はありながらも情報伝達・メディアの新しい姿は大きくなるばかり、微博(の有名人)につく何百万人のフォロワーを見ていると、その勢いは日本の比でもないのではと感じるばかりです。
農村の情報が都市に伝わっていく、ITを都市のものとばかり見るなかれ、農村の問題を見るにも微博を欠かせなくなりそうです。今後も于建嵘の「つぶやき」に注目です。