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中国軍、北朝鮮領内に駐留か=中国紙は「韓国メディアのデマ」と反発―政治学で読む中国

2011年01月18日

韓国は朝鮮半島の平和を望んでいない?

1月15日に韓国紙『朝鮮日報』は、韓国大統領府関係者の話として、中露国境に近い北朝鮮北東部、羅先(ラソン)に最近、中国軍が駐留したことを報じました。


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『読売新聞』は『朝鮮日報』の記事を要約する形で以下のように記事にしております。
中国軍、北朝鮮に駐留…韓国は有事介入懸念(読売新聞、2011年1月15日)
中国軍の北朝鮮駐留は、1994年12月、板門店の軍事休戦委員会から中国軍が撤退して以来だという。

同紙によると、駐留する中国軍部隊の規模は不明。この関係者は、「中国が投資した羅先の港湾施設などを警備するため、少数の中国軍を駐留させる問題について、中朝間で協議が行われたと聞いている」と説明。「政治・軍事的な理由というよりも、施設警備や中国人保護が目的とみられる」との見方を示した。

一方、韓国外交通商省高官は、「北朝鮮の急変など有事に際し、中国が自国民保護などを理由に兵力を大量投入し、朝鮮半島問題に介入する可能性がある」との懸念を示した。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。

ところが、中国政府はこの報道を本日17日に否定しました。中国共産党系の『環境時報』も「韓媒編造中国軍隊進入朝鮮朝当地居民直斥其胡説八道」(韓国マスコミ、中国軍が北朝鮮に進駐とデマ報道=現地住民もデタラメと批判)という記事を掲載しております。

『環球時報』の記者が『朝鮮日報』の記事を読んで、関係者等に確認したところ、「デタラメ」であったことがわかったという形式の記事。その関係者は、北朝鮮の治安は安定しており、『朝鮮日報』が報道しているような、「争乱鎮圧」や「脱北者の管制」などということはなく、全く滑稽だと語っています。

その上で、羅先は中国・ロシア・北朝鮮の3ヶ国が国境を接する地域で、とても敏感が場所なので、そんなところに中国軍が軽々しく進駐するはずがないと発言。万が一、北朝鮮が軍事的援助を求めたとしても、必要なのは戦術ミサイルや空軍、情報通信技術であり、装甲部隊ではないので、韓国マスコミの報道は全くもって素人のデマにほかならないと切って捨てています。

この記事で私が最も興味を引かれたのが最後の部分。なぜ韓国がこうしたデマを流したかという分析です。理由として挙げられているのは、朝鮮半島が安定に向かってしまっては韓国が困るから、だそうです。安定してしまうと、李明博大統領の対北朝鮮強硬姿勢が説得力をもたなくなってしまうからだと指摘しております。

以前、朝日新聞が中国軍が「南シナ海で、他国が実効支配する離島に上陸し、奪取する作戦計画を内部で立てていること」を記事にした時も、中国は朝日新聞の記事は、日本外交の宣伝記事を流していると批判していることを書きました(過去記事「中国が離島奪取計画を立案=朝日新聞報道に中国官制メディアが反論―政治学で読む中国」)。今回の記事も基本的に同じ発想に基づいて書かれており、「マスコミ=政府公報」となっている中国ならではの発想だと思います。


*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。



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