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2011年01月20日
中国イメージCM放映、米国の対中感情悪化を意識
米国では胡錦濤国家主席の訪米を前にして、バスケットボールの姚明選手、宇宙飛行士の楊利偉氏、中央テレビの著名なキャスターである白岩松氏らを出演させた政府のイメージCMが17日、ニューヨークのタイムズスクエアで初放映されました。同CMは2月14日まで計8400回も放映されるといいます。
*「中国国家イメージフィルム―人物編」
さらに米国ワシントンでは、胡錦濤国家主席の訪米期間中、中国政府の官製の報道センターまで設立されることになっており、「中国政府の息のかかった」情報が米国から発信されることになります。
中国政府が米国人、米国政府の中国に対するイメージについて、これほどまでに神経質になっているのはやはり、尖閣事件に端を発した一連の事件で、米国人の対中感情が悪化していることを強く意識しているからでしょう。
習近平の台頭がもたらした中国の暴走
昨年の尖閣事件、そして劉暁波氏へのノーベル平和賞授与を目の当たりにしたときの中国政府の反応には一種異質なものを感じた方も多かったと思います。わたしはこの中国の暴走の原因に、習近平国家副主席の台頭というのをみてしまうのです。
その証拠に尖閣事件で中国が日本に対して見せた執拗かつ強硬な姿勢は、胡錦濤主席、温家宝総理がこれまで日本にとり続けてきた比較的穏健な姿勢とは明らかに一線を画しています。まさにそのまっただなかだった10月に、習近平副主席が中央軍事委副主席に就任しているのです。
このことからしても、昨年の9月から12月のあの中国政府の対応は、軍部内における過渡期の混乱、軍や共産党内部の権力闘争、そして習近平副主席の対日強硬姿勢、そして国際社会に対する強硬姿勢が反映された結果なのではないかとわたしは思っています。
一昨年に習近平副主席が訪日する際、天皇陛下の1カ月ルールを無視して陛下との会見を段取りするよう宮内庁に圧力をかけたことが明るみに出て、民主党は批判の的になりました。しかし今考えてみれば、あくまで天皇の会見を押し切ろうとする強引な手法に、習近平副主席の対日姿勢がすでに見え隠れしていたように思えます。
胡錦濤訪米が中国国内政局に持つ意味
そして・・年が変わって2011年になっても、習近平副主席の軍・政府・党における存在感が増していることは事実のようです。現に米国のゲーツ国防長官が訪中した際も、習近平副主席は胡錦濤主席の会見(11日)よりも1日早い10日に、同国防長官と会見しています。
このように中国のナショナリズムが共産党や政府内で台頭し、加速しかかっている世代交代の波を胡錦濤国家主席がどう取り戻すか。これは今回の胡錦濤国家主席の訪米の成果如何にかかってくることは間違いないでしょう。