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2011年01月21日
押収されたニセ札は年に40億円超
そんな中、中国通貨博物館、中国造幣総公司共催となる「反偽造通貨展」が18日、北京で開幕しました。開幕のあいさつに立った馬徳倫中国人民銀行副行長は、2010年の偽造通貨取締りの成果を発表しました。
同副行長が明かしたところによると、金融機関が昨年押収した人民元の偽札は430万9000枚、額面にして実に3億3800万元(約42億2000万円)に達しました。
馬徳倫副行長は同時に、2010年の偽造通貨取締り活動の情勢について、
▽通貨偽造犯罪の件数は減少しているものの、通貨偽造犯罪の根本的な解決には至っておらず、犯罪活動が再度増加する兆しがある
▽偽造の方法で新しい手法が次々と出ているものの、偽造のできは押しなべていいものではない
▽金融機関で押収される偽造通貨の量は大幅に減少しており、流通過程における偽造通貨の量が顕著に少なくなっている
ことを挙げました。
顕著に少なくなっているといっても、金額にして3億3800万元(約42億2000万円)ですから、膨大な額になることがわかります。これほどの額の通貨が「金融機関で押収された」ことにも驚きです。
この数字から「偽造通貨の量が少なくなっている」と断定することはとてもできないですし、少なくともこの倍以上は中国の一般市場に出回っていると考えたほうがいいでしょう。
ニセ札の70%は100元札
現在のように、経済がインフレになるとどうしてもこういった通貨偽造の犯罪が増えてきます。実際やはり、偽造する通貨の額で一番多いのは100元札(約1250円)で全体の71.5%、10元札(約125円)は全体の11.4%を占めました。馬徳倫副行長は中央銀行の通貨発行の目標として、通貨偽造分子に偽造させにくくし、一般市民が偽札を判別しやすくすることを挙げました。
しかしその一方、馬徳倫副行長は18日のメディア向けのブリーフィングの中で、中国のインフレの継続を懸念させる発言も行っています。馬徳倫副行長は2011年1月の通貨発行量は昨年同月の1兆2680億元(約15兆8000億円)を上回るだろうと説明しました。
また、13日の京華時報の署名論文の中で馬徳倫副行長は、「現金の需要が年20%の割合で伸びている」と述べ、中央銀行の人民元の生産能力がこの需要に追いついていないことを認め、危機感を表明しました。
その一方馬徳倫副行長はインフレ懸念を気にしたのか、先のフリーフィングの席上では「高額紙幣を発行する計画はない」と表明し、当面人民元の最大額面を100元(約1250円)で維持するとの考えも示しています。
インフレと偽造通貨犯罪の増加。中国の抱える悩みは続きそうです。