中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年01月20日
翌日、息子を預けている学校に電話した。無事だとの知らせを聞いてほっと一息ついたが、電話にでた息子の言葉は胸に突き刺さるものだった。「母さん、いつ返ってくるの?会いたいよ」、と。あなたの学費のために働いているんだからと諭した李さんに、息子は「帰ってきてくれないなら、ボクが浙江まで行く」と言って泣き出した。
「いや、本当に衝動的に動いてしまいました。ただすぐに戻って息子に会ってやりたいと思ったものですから。」李さんは今、そう話す。息子の泣き声を聞いた李さんは、すぐに故郷に戻って息子に会おうと決意した。
上司に休みをもらい、荷物をまとめた李さん。だが問題は先月買ったばかりの中古のバイク(125CC)だった。夫の実家と自分の実家の距離が少し遠いため、バイクがあれば便利だろうと思って買ったのだが、重慶まで送るには分解したとしても、300元(約3750円)もかかってしまう。月1200元(約1万5000円)あまりの給与を節約して使っている李さんにとっては高すぎる金額だった。
そこで李さんはこの小さなバイクで重慶までの2000キロを走ることを決めた。とはいえ、その道程は厳しすぎるもの。小学校2年までしか通わなかった李さんは読めない字も多く、地図を見てもわからないことだらけ。人に聞きつつ、あるいは地図に直接、線を書きこんでもらいながらの旅となった。女の一人旅は危なかろうと、作業服を着込み、男の姿に扮してバイクを走らせたという。
出発から6日後、ようやく李さんは重慶市へとたどり着いた。トイレに行くのも不便だと極力水を飲まないように市、6日間で飲んだ水はペットボトルに半分だけ。宿に泊まったのは1回。しかも簡易宿舎で4時間の急速をとっただけだったという。こうして息子の学校にたどりついた李さん。持っていたガムを息子に食べさせると、ついにこらえきれなくなって息子をだきしめたまま大泣きしてしまった。
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19日に重慶晩報が李さんの記事を掲載。またたく間にネット掲示板やネットニュースに転載され、「2011年最初の感動ニュース」のポジションをゲット。私も記事を読んでいてグッとくるものがあったのですが、よく考えて見ると、「重慶でバイクを買えばよかったんじゃね?」という疑問の気持ちがむくむくと……。5000元(約6万2500円)で買った中古らしいのですが、掘り出し物だったんでしょうか?
さてさて、中国的にグッとくるポイントをとりあげてみると、第一に「出稼ぎ農民と留守児童」の問題。留守児童とは両親が出稼ぎにでかけたため、おじいちゃん・おばあちゃんと故郷に取り残された子どものこと。なんと中国全土に5800万人弱もいると言われています。幼い頃に両親と離れてしまうため人格形成に問題があることが多いとか、悪い友達に騙されてヤクザになってしまったりとか、いろいろと悲しいエピソードが山盛りです。
第二のポイントは「出稼ぎ農民の貧しさ」。李さんが惜しんだ300元(約3750円)といえば、今の中国では友達と一回飯を食べたり、カラオケにいってしまえば消えてしまう金額。その金額を惜しんで、6日間のバイク一人旅を敢行してしまった、貧しさがみなの心にグッとくるポイントです。
さらに付け加えるならば、今は2月3日の旧正月を目前に控えた帰省ラッシュ「春運」の季節。学生やら出稼ぎ農民が大挙列車にのるわけですが、少しでもお金を節約しようとみなが必死。なので高速鉄道は空き席があっても、普通車は乗車率200%的な混雑状態となっています。
というわけで、中国人的に「あー、わかるわかる」というグッとくるポイント満載の李さんの物語。大手メディアの取材申し込みが殺到するなど大変な騒ぎになっているとか。こうなると、企業も広告になるんじゃないかといろいろ動きそうですね。日本のバイクメーカーも「2000キロ?うちのバイクなら10時間で着くぜ!」とかいって、プレゼントしたりするといいんじゃないでしょうか。
中国はガソリンの価格が80円/Lらしい。
どんなバイクか判らんが、単気筒として30km/Lと仮定すると、2000kmで67L使うわけだ。
80×67=5360円
分解して送る3750円より高くなる。
もし仮に燃費が43km/L越えてればギリギリ採算あうけど、中古だし微妙。
李さんは送付代+交通費をケチった、んだよな?
それにしても、食費等々でそんなに変わらない気はするが・・・