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【写真】これを飲んでいたのか?!中国水道水の恐怖=カルシウム摂りすぎにご用心―北京文芸日記

2011年01月21日

水からの伝言――溶けたナイフ

年始早々実家に帰り、もう2週間が経つ。初めての帰国ではないから実家で生活していても取り立てて不便は感じないが、少し不思議に思うことがある。


angle in bus / xiner wang


それは水だ。我が家もついに健康ブームに乗ったらしく、2年ぐらい前から飲み水に気をつけている。とは言うものの、水道水を冷蔵庫で保存するだけという簡単なポット型浄水器を使っているだけだ。

しかし、子供の頃から飲み水と言ったら蛇口を捻れば出るものと思っていたし、北海道の水道水は日本で一番綺麗だと教えられていた自分としては、効果があるのかわからない浄水気でも家族が使っていると違和感を覚える。

*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。

ポットが冷蔵庫に入っているのでいつでも冷えた水が飲めるのはありがたいのだが、飲んで健康になるとは微塵も思わない。ただ、中国の水道水よりは遥かにマシだとは思う。

中国の水道水は直飲みできない。水を飲みたきゃ飲用水を買って来るか、お湯を沸かすかだ。大量の飲料水が入っている水タンクと簡易型ディスペンサーを購入すれば、貯水がなくなったら水タンクを業者に宅配してもらえるので、重いペットボトルを買いに行く手間を考えると効率が良い。

例え沸騰させても水は必ずしも安全ではないという意見も聞くので口に入れる水はすべてミネラルウォーターで統一するのが無難なのだろう。中国の水にはカルシウムが多く含まれており、飲みすぎるとお腹を壊すのだそうだ。だがお茶やカップラーメンのために安いとは言えミネラルウォーターを使いたくはないので、水道水をヤカンで沸かすのが無精者の性。

しかしこの日常やり慣れたお湯を沸かすという行為の手順を間違えたばかりに、ボクは新年早々中国の水の恐怖を思い知ることになる。

2011年が始まって間もない、しかし何ら感慨もない1月3日の早朝。建てつけが悪い窓枠のせいで北京の乾いた寒風が侵入するボクの部屋は、暖気が利いているとは言え朝はひんやりしていた。

寝起きにボクはセブンイレブンで買ったインスタントのコーンポタージュスープでも飲んで暖を取ろうと台所に行きお湯を沸かした。

そして一眠りした2時間後、ボクはセブンイレブンで買ったインスタントのコーンポタージュスープでも飲んで暖を取ろうと台所に行き……

アレ?!さっき沸かしたお湯でなに飲んだっけ?

台所からドア越しに聞こえる、かすれた悲鳴のような音で、自分がやってしまったことを理解した。

台所はノドを傷めた歌手の部屋のように蒸気で溢れかえっていた。そして真っ白な湯気が漂う狭い厨房のガス台には、底が真っ赤に焼けたヤカンが苦しそうな悲鳴を上げていた。

そう、ボクは2時間以上ヤカンを空焚きしていたのだ。

濡らした布巾で取っ手を掴んでシンクに持って行き冷水をぶっかけると、ヤカンは怪虫のような声を上げて湯気をもうもうと出した。

蓋を開けると中まで真っ黒に焦げていた。水を入れ続けると注ぎ口から錆色の水が溢れ出す。

本来なら捨てるべきなんだろう。しかしこのヤカンはボクがこの部屋に引っ越したときから、かれこれ1年は使っている愛用のヤカンなのだ。ずんぐりした土瓶型で大量に湯を沸かすのに便利だから重宝していた。それに新しい年が始まったばかりなのに物を捨てるのは縁起が悪い気がする。

とりあえず、洗って焦げを落とせば使えるようになるんじゃないかとゴシゴシこすると徐々に焦げが薄くなっていくような気がした。内側を集中的に洗って力を込めてこすると妙な手応えを感じた。そしてしっかり洗剤を落とすためゆすぐと中から変な音が聞こえた。

ジャバジャバジャバジャバ…

ジャラジャラジャラジャラ

ギャラギャラギャラギャラ

細かな金属がこすれ合うような異音。ボクはすっかり焦げ付いたヤカンの内壁が剥がれ落ちたのかと思い、新しく購入するヤカンのことを考えながら、もうスクラップ決定のヤカンを傾けた。しかし注ぎ口に何かが詰まっているらしく水の出が悪い。

だったら蓋をはずして水を出してしまえいい。そう思って、ヤカンをさかさまにすると、水と一緒に真っ白な欠片が降ってきた。

中国の水は石灰が多く含まれる硬水である。だから水を使用する機械には飲用水以上に気を使う。

中国生活が長い人間だと加湿器に使う水は絶対ミネラルウォーターを選ぶ。普通の水道水だと石灰が固まり機械が故障してしまうからだ。石灰は蒸気にも混じるので、部屋全体の電子機器が汚染される恐れもある。

ボクは1年間あまりこのヤカンでお湯を沸かし続けてきた。それだけではない。飲むのを忘れて水を入れたまま1週間ばかり放置していたこともあった。その日々の蓄積がこの結果を生んだのだ。

20110121_yakan1

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*驚きのあまり早く綺麗にしなければと焦り、写真撮影を思いついたときは既にあらかた流し終えたあとだった。本当はこの倍ぐらい底に溜まっていた。決してモルタル壁の塗装から出た削りカスではない。

1年ぐらいしか使っていないヤカンにこれだけの量の石灰がこびり付いていたのも驚いたが、それよりも流しにまとめて捨てた石灰の欠片がいつの間にか溶けてなくなっていたことが怖かった。

やたら神経質になるのも考え物だが、たぶんこれを飲み続けても背は伸びないので、中国に来る人は飲み水に注意しましょう。

*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。






 コメント一覧 (2)

    • 1. k
    • 2011年07月29日 00:53
    • 東京の水道水でも同じ現象が起きますよ。電気ポット、加湿器が同じカルシウム付着で駄目になります。
      別に毒でも何でも無いでしょう。多少、日本より硬度が高いというだけで。
    • 2. Chinanews
    • 2011年07月30日 16:42
    • >kさん
      欧州とか硬水の国では同じ事が起きますね。ただ日本人には知らない人が多いからか、はたまた中国はよくお茶を飲むので魔法瓶ややかんにべっとりつくためか、中国滞在中に「ええっ、こんな石を飲んでいたの?」と驚く人が結構多かったりします。

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