中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
厄介者だったレアアース
さらには2010年8月10日に広東省、広西チワン族自治区など5省・自治区15市の責任者がレアアースの乱掘、過度な生産などを取り締まる鉱物管理区域共同行動計画に調印したと国内メディアは報じました。
つまりここから、レアアースの重要性から来る中国の環境破壊、そして管理が中国政府にかなりの負担をもたらしていたことがわかります。ここまでの中国のレアアースに対する認識は、「環境破壊をもたらすやっかいな資源」にすぎなかったのでしょう。
尖閣事件で明らかになったレアアースの戦略的価値
しかしそこに来て尖閣事件が発生しました。中国政府は先に述べたように、レアアースの生産でもたらされる環境破壊という国内問題になやまされていましたから、「これで生産を減らせて、尖閣問題で日本が折れてくれるなら、一挙両得だね」という軽い認識で、日本にレアアースの輸出規制という「けん制」をしてみたというのが本音なのでしょう。
事実尖閣事件発生まで日本との関係、さらには他国との関係の中で、中国政府はレアアースの「レ」の字も口にしていなかったわけですから、こう考えてみるのが普通だと私は考えています。
しかし日本を「けん制する」つもりが、思った以上にあっさりと日本が折れてしまいました。船長は釈放され、中国政府は当初の目的を達成することができたわけです。しかし、代償は大きいものでした。国際社会から、「中国はレアアース問題を利用して世界を牛耳ろうとしている」との批判を浴びたわけです。中国はここにきて、レアアースの戦略的重要性にやっと気づくことになります。
今年の中国レアアース戦略
この重要性の認識を裏付ける形で、中国政府が2010年12月29日にこれ見よがしで発表した2011年度のレアアースの第1次輸出割当量は、前年同期比で11.4%減となっていました。権威筋は輸出割当量は前年比の半減になるだろうと語りました。また、商務部は「通年の割当量はまだ確定していない」と表明したばかりか、例年発表される第二陣の割当量について、「発表しないこともありうる」と述べたのです。
中国政府は米国やオーストラリアに自国のレアアース資源を開発するよう呼びかけており、表面上は「そちらでもっとレアアース取ってよ。うちらの輸出が減ってもかまわないから」とやや突き放した態度に見えます。
しかしその一方で実は、中国政府は年明けから国内のレアアース資源に対する管理の強化、そして統合・整理を進めています。1月19日には国土資源部は1号 文書を下達し、「わが国のレアアース、鉄鉱石資源の保護と合理的利用のため」、江西省カン州市にあるレアアース採掘地区11カ所、鉄鉱石採掘地区2カ所を 第一陣の国指定の開発区として発表しました。 このことは、中国政府がレアアース資源を国として把握し、生産地や量までしっかり管理して国家戦略として引き続き利用したいとの考えがあることを意味しています。
中国が国内のレアアース資源をどのように整理していきたいと考えているかということについては、次回また機会を設けてご紹介したいと思います。
*追記(2011年1月25日)
ふるまいよしこさんから、尖閣事件以前のレアアース輸出規制について書かれていないなど本エントリーに関するご批判をいただきました(リンク)。これに応える明天会更美好さんのエントリーがアップされている(リンク)ほか、「KINBRICKS NOW」管理人・Chinanewsも応答の記事を書きました(リンク)。