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「公平」な渋滞解決方法ってどんなんだろう?北京の抽選制と上海の入札制―中国

2011年01月28日

2011年1月26日、北京市でナンバープレート発行規制導入後初めてとなる抽選会が行われた。


深圳白石洲_堵车_02 / 刘云天


2010年12月23日、北京市は渋滞緩和政策案を発表した。柱となるのは「北京市小客車数量調整暫定規定」(小客車は9人乗り以下の車)。 2011年のナンバープレート発行数を24万枚前後に抑える方針で、1月は1万7600枚に限定された。申請者多数の場合は抽選で当選者が決まる。

1月1日から8日までの申請期間に、21万件もの申し込みがあったという。抽選倍率は10.6倍という難関。厚壁を帰すため、宝くじの抽選と同様に公証人が在席したほか、テレビ中継も行われるなど配慮されている。

しかし、ネットユーザーからは早速問題点が指摘されているようだ。26日付新華網は記事「車購入抽選時代が開幕=ネットユーザーは4つの疑問点を提出」を掲載した。その疑問点とはおおよそ次の通り。

1:車を買う気がないのにとりあえず申し込んでみたっていうウソの申請はどうするの?

2:ナンバープレートの闇取引があるのでは?当選したけど買わなかった人はどうなるの?

3:今後申請者は増え続けてどんどん当選確率は下がるはず。ずっと当たらない人はどうするの?

4:何台も車を持っている世帯でもまだ申請できるのはなんで?
なるほど、いずれも一理ある主張ではないだろうか。

問題は「公平性の確保」だ。渋滞を解決したいという点では誰もが一致している。混みいった北京市に新たな道路を造ることは難しいことを考えれば、自動車の数を減らす、少なくとも増加ペースを減らすことしか解決策はない。だが、規制が課される中で公平な方法を見つけ出すことは難しい。

上海市では1994年からナンバープレート発行規制を実施している。こちらは抽選ではなくオークションという手法。例えば今月は1000枚が発行されるとしたならば、オークションで上位1000人が落札することになる。経済学的にはきわめて「正しい」解決策のように思えるが、ナンバープレートの価格が同重量の黄金価格を超えるなど高騰したこともあり、金持ちばかりが得をする政策との批判も根強い。

北京市がオークションではなく、抽選を採用したのは上海市オークション制度に対する批判を考慮してのものではないかと考えるが、上述したネットユーザーの疑問のように抽選制も大きな問題を抱えている。とりわけナンバープレートの闇取引市場が成立すれば、一部の業者のみが利益を得るオークション制度が確立するのと同じことになってしまう。

ナンバープレート発行規制はいまだ上海市と北京市のみに導入されただけだが、都市化、自動車産業振興、マイカー保有と中国政府が推進してきた政策が転機を迎えつつあることの象徴と言えるだろう。都市に人と富をただひたすらに集中させるのではなく、よりよい公共資源の配置や適切な都市人口の負荷配分などが求められることになる。

昨年開催された上海万博のスローガンは「よりよい都市、よりよい生活」だった。このスローガンをどこまで現実の課題として受け止められるか。貧困からの脱出の時代を迎えつつある中国にとって、今後求められる課題となろう。

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