2月3日の旧正月まであとわずか。のべ28億人超が移動する帰省ラッシュ「春運」は今、ピークを迎えています。記事「
のべ28億人超が移動する世界最強の「民族大移動」=春運のオモシロ・ニュースを集めてみた」でもとりあげましたが、毎年毎年、不思議なエピソードが誕生する「春運」。今回、ご紹介するのは「空港でカニを煮た男」の話です。
2011年1月30日付広州日報を参照しました。

正宗阳澄湖大闸蟹--帮客户拍得一组照片 / kittysara―――――――――――――――――――――
舞台は広東省広州市の白雲国際空港。2011年1月28日、1人の男がすごい形相で駆け回っていた。と、空港スタッフをいるのを見つけるや駆け寄り叫んだ。
「どこでカニをゆでられるんだ?!」
「空港」という場所と「カニをゆでる」という行為がどう結びつくのか?!不思議でしようがない話だが、男の話を聞くと納得。
もう5年も故郷に戻っていません。今年、ようやく帰れることになりました。ずっと会っていなかった妻と子どもにようやく会えるんです。おみあげを買って帰りたいと思って、知り合いに頼み込んでこのカニを手に入れました。ところが飛行機に乗ろうとしたところ、安全検査で止められたなんです。生き物は持ち込んじゃダメだ、と。となれば、もう空港でゆでるしか!
上海ガニを始め、ゆでガニといえば中国のごちそう料理。だが、死ぬとすぐに傷んでしまうため、ゆでる段階で必ず生きた状態でなければならない。というわけで、今、ここで、空港で、どうにかカニをゆでなければならないのだ。
男の事情もよくわかるが、さすがに無理だろうと思ったが、ここで空港スタッフが神アイディアを生み出した。「熱水機のお湯でゆでればいいのでは!」、と。お茶の国・中国には熱水機が備えられているところが多く、客に無料でお湯を提供している。
それを聞いた男は大喜び。カニが入っていた発泡スチロールの箱にお湯をどぼどぼ。これで果たしてカニがゆだったのか、正直疑問は残るが、とりあえずゆでることに成功。スタッフに何度もお礼を言いながら、搭乗口へ向かったという。
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シチュエーションの面白さだけで、今年の春運ベストエピソードをゲットできそうないい話じゃないでしょうか。この後のエピソードも知りたいですね。カニがぷーんと香る中でのフライトとか、5年ぶりの妻子との再会とか。
それにしても、広州日報。よくもまあこんなエピソードを拾ってくるもんだ。空港からタレコミがあったんでしょうかね。中国メディアは、結構こうした「温馨、温暖」(ぬくもり、ハートウォーミング、ヌクモリティ)ネタを取り上げることが多いですね。
きっと同じシチュエーションでカニを捨てられた人のほうが多いですし、そもそも出稼ぎ労働者が5年も帰省できない問題を考えないとダメでしょとか思わないのではないのですが、まあ、少なくともカニを抱えたおっさんにとって良かったことは間違いないですよね。