「うさぎ年のニューイヤーカード」という風刺アニメが注目を集めています。2010年に中国であった「ひどい話」を振り返る内容です。コメント欄でアレックスさんに教えていただきました。
アレックスさんのブログ「Game Company イメージキャラは赤魔道士」に「
中国は終わったのか始まったのか?」に解説あり。また東京新聞でも紹介されています。
「「虎の圧政 “庶民”ウサギが打倒」 “反体制デモ”アニメ 中国サイトから削除」(東京新聞、2011年2月1日)
中国のネットで反体制デモを連想させる風刺アニメが大手動画サイトから削除されたことが三十一日、分かった。エジプトのデモを議論する簡易ブログの一部も閉鎖されるなど、メディアを統括する中国共産党宣伝部の意向が働いた可能性もある。
「二〇一一ウサギ年の年賀状」と題されたアニメは、庶民の「ウサギ」が、胡錦濤国家主席の「胡」とほぼ同じ発音の「虎」一族の圧政に苦しみながら、最後には虎一族を集団で倒す内容。
「KINBRICKS NOW」でも紹介してきた中国の社会事件ネタが満載ですので、野暮を承知でネタをちょっと解説してみようかと。まずは動画を見て欲しいのですが、別ウインドウでYoutubeを開いてその下の解説と両方見てもらうのがいいかも。
*英語解説なしのバージョンはこちら。
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*風刺アニメを作成した互象動画ウェブサイト。問題の動画のリンクは残っているが、ジャンプ先の動画共有サイト・Youkuではすでに削除済み。ところで左下にどこかで見たことあるなにかがいるのですが……。・免責声明
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・哐哐哐動画 2011年うさぎ年正月動画
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・花火打ち上げ。旧正月の上掲
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・絵本のプレゼント。メモには「哐哐へ。明けましておめでとう。小紅より」
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・喜ぶ哐哐。包みを破ると、「ウサギの哐哐」という題名。
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・遠い遠い未来、ある美しい森の中で。歌は中国の有名な児童曲。「白い白いウサギ、お耳がぴんと立っている……云々」
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・三虎ミルクのトラック到着。お母さんが子どもにミルクを飲ませると……。爆発。
メラミン混入粉ミルク事件の風刺。メラミン混入粉ミルク事件は2008年ですが、廃棄されていなかった粉ミルクが再利用されていることが発覚しました。
本サイト過去記事を参照。
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虎の基地(?)である洞窟にウサギが抗議の突撃。演壇に並ぶトラ、下にはウサギたち。
「調和(和諧)森林を作り上げよう」の横断幕がかかっている。「和諧社会」は胡錦濤政権のキャッチコピー。
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と会場に火災発生。焼け死ぬウサギたち。トラが一言。「動くな!まず幹部から先に避難する!」
おそらく上海高層マンション火災を風刺したもの。 (追記)Twitterでコメントをいただきました。1994年のカラマイ市大火を風刺したもの。劇場で発生した火災で325人が死亡。うち288人が小中高の生徒だった。居合わせた官僚は「幹部を先に通しなさい」と叫び、先に逃げ出した。↓
外に出ると殴られているウサギ。文句をつけていたせいか。
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再び村のシーン。ミルクで赤ちゃんが死んだことを悲しんでいると、
トラが操るショベルカーが出動。「拆」と書かれた家を壊していく。中国では取り壊し予定地の家にはチョークで「拆」と書かれる。
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スロットマシーン。「拆」が横に3つそろうとコインが大量に。
土地収用で政府が儲けていることを指す。
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テレビ。「慰問」と書いた札を持つトラ。感謝という札を持って迎えるウサギ。
貧困家庭を訪問など中国政治家のショーを意味する。
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トラに囲まれた家に立てこもるウサギ。いわゆる「釘戸子」(立ち退き拒否戸)を意味する。ウサギは自ら体に火を着ける抗議の焼身自殺。
昨年11月、黒竜江省の事件を風刺。
本サイト過去記事を参照。
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キレたおじいさんウサギが「抗議」すると、トラに殴られ拉致される。
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追いかけるウサギの哐哐とその妻。と、いきなり走ってきたトラの車に妻がひき殺される。トラの運転手が下りてきて一言。「オレの親父は虎剛だぞ!」。
李剛事件を指す。
本サイト過去記事を参照。
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1人、虎剛の車を追いかける哐哐。すると、道の先におじいさんウサギを捕えていたトラたちが。車がくるのを見計らっておじいさんを道に投げ出し、ひき殺される。
銭雲会事件を指す。ブログ「壺齋閑話」の記事「
銭雲会 Qian Yunhui の死を巡る謎」を参照。
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うつむきながら、家族の悲惨な死を思い出す哐哐。顔を上げると、悪魔の形相に変わっている。
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哐哐率いる兎の大群がトラの家を襲撃。1人、2人と強いトラにやられていくが、ひるまずに襲いかかっていく。哐哐自身も命を落としながら、虎剛を倒す。
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場面変わって。絵本の前で目を覚ます人間の哐哐。絵本の最後のページには「この後、森のウサギたちは幸せな生活を送りました」と書かれている。
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人間の哐哐が「こりゃ本当に意義深い1年だったなぁ」と一言。お母さんが「餃子包むの手伝いなさい」と呼ぶ声。
哐哐が走っていく。
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「うさぎ年になったぞ!ウサギだって追い詰められると、人を咬むんだ!」の文字。
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エンドロール。
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最後はウサギたちが革命を起こしているので、削除されるのもよくわかるという内容。1月22日にアップされたとのことなので、制作期間も考えると、チュニジアやエジプトの情勢を見て作ったわけではないんじゃないかと思いますが、まあタイムリーなネタですよね。
同じ独裁国家ということで、「中国に飛び火しないの?ニヤニヤ」とワクテカしている人も多いかと思いますが、多分そういう風にはならないんじゃないか、と。ニューズウィーク日本語版に「
エジプトの次は中国、にはならない理由 」という記事が掲載されています。
・中国は一党独裁体制ではあるが、国民1人当たりの所得や商品・サービスの購買力、教育の機会など、暮らしの豊かさを示すデータは総じてよくなっている。
・中国政府が情報と民衆を統制し、反政府勢力を抑え込むことに長けているから。近年ではチベットや新疆ウイグル自治区で暴動が発生したが、中国政府が言うところの「社会秩序」を乱す間もなく即座に鎮圧された。
・近年注目を集めた中国の市民運動といえば、部族間の対立や土地の所有権、環境破壊をめぐる衝突など、具体的な問題が原因となっている。しかしその矛先が中国政府に向かったり、体制崩壊を狙う動きにつながることはない。さしあたって胡は、中国の人々から愛されていなければ憎まれてもいない。
という内容。他にも、政府と軍の関係、民草の怒りを反政府運動へとまとめあげる組織の欠如なんかがクリティカルな問題ではないかと思っていますが、私も「中国に飛び火はしないだろう」と思っています。ま、、私の予想はよく外れるんですけども。
コージークリッター ネックウォーマー bunny(ウサギ)
私の友人も上海郊外で「釘戸子」でしたが、今は農地の無い、団地住まいの農家になってしまいました。
中国では民主革命は難しそうですね。何しろ、軍も警察も、国民の為ではなく、共産党の組織ですから。反対意見は、国家転覆罪ですぐに青田刈りされますから。
昔のVOAの如く、「自由中国の声」として公海上からわめくしか無いでしょうか? でも潜水艦から演習表的にされるかも知れませんね。