中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年02月02日
ベトナムの輸出品は原材料中心=中国市場への依存進む
その一方、ベトナムから中国への輸出額はわずか65億ドル。輸出品も加工品より各種原材料が多く、付加価値が低い。原油などの資源輸出は外貨獲得にはなるとはいえ、安全保障上の問題もあるとの議論もある。また、ベトナム工商省の2011-2012輸出品リストの中には、現在その開発自体が未だに大きな議論を呼んでいる、中部高原におけるアルミニウム(ボーキサイト)も含まれている。
(訳注:この案件に関しては、地元の少数民族地域の環境問題、更には中国企業進出による大量の中国人流入なども懸念されている。以下の記事を参照。「【第7位】中国人の不法就労が問題に、ボーキサイト開発で」NNA.ASIA)
こうした現状に関しては、ベトナムの経済学者らも、中国市場への過剰な依存であると警戒感が強めている。輸入品の割合はEUやASEANを越えており、また上記の輸入金額は個人輸入(訳注:国境地域を地元住民・商人などが個人で行ったり来たりして運ぶような貿易はかなりの部分これに当たると推測)などを含めた小額貿易を含んでいないのであるからなおさらである。(以上主にBBC記事より)
メイドインチャイナへの懸念とメイドインジャパンへの期待
懸念は中越貿易の規模にとどまるものではありません。中国製品が浸透したとはいえ、ベトナム人の間にはまだ品質が低いという印象が根強いのです。日本でも同様ですが、それでもメイドインチャイナに囲まれることに慣れてきた日本人と比べ、ベトナム人の中国製に対する不安感は強く、それに反比例するようにメイドインジャパンへの信頼感は非常に高いものがあります。
加えて、(多くの場合)日本企業が品質管理の役割をしてから日本に入ってくる中国製と、また違ったルートで来るベトナムに流通する中国製では、同じメイドインチャイナでも物自体が大きく違う、という事情もあるでしょう。
ベトナムのウェブサイトでも中国製品、特に食品などに関するスキャンダルはしょっちゅう取り上げられます。食品輸入も相当多い中、日本と同様に、食の安全の問題も中国製品と対峙する主戦場の一つです。(まあ、じゃあベトナムの食品が安全かというとそれはそれで?もあるのですが…)。メイドインジャパンへの期待は、メイドインチャイナ、もしくは中国全体へのバランサーとしての日本への期待の裏返しとも解釈できます。
私事ですが、先日ベトナム人の妻が日本に来た際、ベトナムの友人から「日本製のスピーカーを買って来て欲しい」と頼まれていました(まずスピーカーを飛行機の荷物にして持って行くというところで「えぇ~?」という感じでしたが、それよりも先に)日本製のスピーカーってどれくらいあるんだろうというのが疑問。
探しに探したのですが、なかなか見つからず。やはりほとんどは中国製。やっと見つけた日本製は、ギター用だかなんだか、非常にプロ向けっぽい品で、値段も一桁違いました。やっと見つけたの日本製スピーカーですが、その価格差を見て、その友人もさすがにあきらめました。ただ、今も残るメイドインジャパンへのこだわりはとても印象に残りました。
大国に直に接するベトナムの難題
日本が対中貿易では基本的に黒字基調なのに比べ(それでも日本の中国脅威論は相当なもの。過去記事「日本の将来を考えさせられる一冊=『デフレの正体』」参照)、国力も国土規模も違いさらに貿易不均衡で苦しむベトナムで脅威論が強まるのは無理もないところでしょうか。
領土問題でも南シナ海で中国との厳しいやり取りを迫られているベトナム、経済問題もすぐに政治問題になりかねない微妙な対中関係での舵取りは続きそうです。
*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。