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2011年02月18日
ヘキサン中毒で137人に健康被害、今なお続く後遺症
17日付北京晨報に よると、25ページにわたる報告書のうち1章は化学物質ヘキサンの問題について割かれており、部品サプライヤーの一つ・勝華科技蘇州工厰(聯建科技)で、 労働者137人がヘキサン中毒で健康被害を受けたことも明かされている。アップルは工場のヘキサン使用を中止したこと、被害者には治療費や補償金が支払わ れたと説明しているが、北京晨報は被害者が今もなお後遺症に苦しんでいると報じた。
同紙の取材に答えた被害者は今もしびれなどの後遺症が続いていることを明かしたほか、工場側は補償金支払いの条件に辞職 を求めているという。ひとたび辞職すれば、後遺症が悪化した場合にもさらなる治療費を求めることなどができなくなるため、被害者らはどう行動するべきか悩んでいるとコメントした。
また未成年労働者91人の就労が発覚したとして、今後、偽造書類審査の基準を強化するとともに、3社との提携関係を破棄したという。昨年問題になった フォックスコン連続飛び降り自殺事件については、アップル社はカウンセラーの配置、出稼ぎ労働者の故郷に近い内陸部に工場を移すことなどを求め、フォック スコン側も受け入れたという。
アップルの責任、中国の責任
「中国製造業はぼろもうけしとるやないか!人民元レート引き上げろ!」という批判に対する中国側の反論でよく例に出されるのがアップルのiPod。
「iPodを見てください!ぼろもうけしとるのはアップル。部品提供して組立までしている中国側の利益は雀の涙ですがな!うちらが泣きながらよなべしてiPod作っているから、みなさん安い値段で買えるんでしょうが!」
という論理です。
いやいや、問題があるのはアップルじゃなくて、サプライヤーの中国企業。中国製造業全体の問題であって、アップルの責任を問うのはお門違いでは?
と考える人も多いでしょうが、ともあれ「中国人労働者が劣悪な労働条件で働き、その結果として先進国の人々が安い品物を買える」という共犯構造になっているのは間違いない事実のわけで。この状況を変えていこうとすれば、まずリーディングカンパニーのアップルから始めなければいけないのは道理かなとも思う次第。なにかと叩かれるアップルですが、気合いの入った報告書を出したり頑張ってはいます。
まあ、それも尻をひっぱたかれているため。先進国の人権団体に「途上国の労働者を搾取するな!」と叩かれ、中国からは「飛び降り自殺にヘキサン中毒かよ!」といじめられる。リーディングカンパニーはつらいよ、というところでしょうか。(ニュースになっていないだけで他の工場でも似たようなことはごまんとあるはずですが)。