中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年02月20日
アップルが慌てて報告書を発表した理由
実はアップル社がこの報告を15日に発表したのにはわけがありました。中国国内の36の環境保護団体が1月20日、「アップル社の毒を取り除く」として、 「IT業界重金属汚染調査研究報告」のアップル特集を公表し、アップル社の中国の供給メーカーにおける労働者の健康侵害、工場地域の水質汚染・大気汚染の 状況などの問題について告発していたのです。
アップル社にアイフォンやアイパッドの完成品を納品している電子メーカーとしては、例の深セン富士康(フォックスコン)が有名です。当ブログでは、富士康 の労働環境の劣悪さやこれに伴う労働者の動きについてこれまで数回に分けて紹介してきましたが、国内のメディアはアップル社に納品しているそのほかの供給 メーカーの実態にはほとんど触れてきませんでした。ですから、先月実態が暴露されたことで、アップル社も少々あわててしまったところもあります。
カルフールとアップル、高まる外資への批判
1月20日といえば、カルフールの問題が出始めた時期でもあります。価格詐欺の問題はさらに一週間余り待たなければなりませんが、12年間働いているのに 賃金が全く上がっていないことをカルフール上海店で働く従業員が告発した記事が国内各メディアから1月20日前後に報じられていました。
当初、アップル社は環境保護団体が発表した報告については「ノーコメント」の立場を貫いていました。しかし、カルフールの労資問題、価格詐欺問題が大きく なるにつれて、国内での外資に対する「空気」を読み取ったのでしょう。ついに2月15日に自社の供給メーカーにおける労働者の健康被害の実態について公に認めたわけです。
アップルバッシングの火種は消えず
ただ国内メディアの報道を見る限りでは、アップル社の今回の報告は、蘇州の工場での実態にしか触れられてないようです。さらに報告では、「これらの工員 は病院で治療を受け、大部分は工場に戻っている。工場はすでに中国の法律に基づいて医療費と食費、賃金を支払っている」と述べており、「円満解決」を強調 したニュアンスになっているのです。ほかの業者での実態については触れられておらず、火種は残ったままになっています。
しかし、国内メディアはこれら137人は「離職の圧力に直面している」と報じています。先の北京晨報の取材によると、健康被害に遭った工員の1人は、工場の主管マネージャーに「いつ離職するのか」「離職しないと会社は賠償金を支払わない」と迫られたと明かしました。
この動きを見たところでは、このことでフォックスコンに続き、アップル社は労資紛争に巻き込まれそうな勢いになっている感じさえも受けます。これが新たな 「チャイナリスク」になるかは不明ですが、中東で盛んになっている大衆による民主化運動に触発されている中国の国民が増えている中、政府が現在の状況に乗 じて国内での宣伝を強化し、国内の市民の不満のはけ口を外資に求める可能性も否定できないでしょう。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。
中国には問題が沢山あります。沢山ありすぎです。けど、改善するならは少しずつやるしかありません。
少なくでも、本当に円満解決したら、アップル社の問題の処理方法は先例としての価値があります。
ところで、私はAnnie Leonardらのこのシリーズの動画が好きです。センスもいいし、面白いし、そしてわかりやすいです。
http://www.youtube.com/watch?v=Cjqm6NeAodU