中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年02月20日
革命という名の「散歩」
それというのも前回記事でお伝えした呼びかけ文は、「中国版ジャスミン革命集合場所」というたいそうな名前がついていながら、実際には「ただ指定された場所に行くだけでいい。遠くから眺め黙々とついてい」くだけでいいという、きわめて低いハードルしか課していないためだ。
一部日本マスコミはスローガンを叫ぶよう呼びかけていると報じているが、「もし状況がそうなった時に」という条件がついていることは無視できないポイントだ。
「そんなの革命じゃない、何を軟弱な」とお怒りの人もいるかもしれないが、これは2007年のアモイPX事件を起源とする「散歩」(デモではなくたまたま集まっただけです、違法な集会じゃないですと装う抗議運動)という手法だ。
もちろんこの「散歩」がチュニジアやエジプトのような事態に発展するとはとても考えられない(もっともエジプトは北アフリカでもっとも安定した国との評価だったそうだが)。だが、こうした呼びかけがあったこと、海外メディアが大きく取り上げたこと、中国ネット民にそれなりに広がったことが今後なにかしらの影響を残すことは間違いない。
勤勉な中国当局と治安コスト
奥歯に物が詰まったような物言いしかできないが、正直にいって「ちょろっと人が集まっただけ」で終わる可能性が高いと思っているものの、「なにかが起きる可能性も否定できない」、つまりよーわからんというのが本音。
「よーわからん」中でも中国当局は仕事を実行中。「茉莉花(ジャスミン)」がネット検閲の禁止ワードになったり、学生に校外に出ることを禁止したり、マック・ケンタ・スタバに行くなと言ってみたり、なんか参加しそうな人々の居場所を確認したりと大忙しのようだ。
在米華人ジャーナリストの何清漣氏は、一つのつぶやきで治安コストが跳ね上がり。何も起きなかったとしてもこんなことが続いたら(実際の警戒業務を担当する)地方も疲れて、そのうち「オオカミ少年」だとまじめにとりあわなくなるのではとのコメント。この中国の治安コストについてはまた別の機会に考えてみたいと思っている。
さて、中国ツイ民のつぶやきを眺めていても、積極的に発言する人もいれば、民主化運動シンパだがこの件に関してはだんまりを決め込んでいる人まで十人十色。今回の呼びかけはQQグループで協議されたとも伝えられているが、誰が、どの組織が主体となっているか、具体的に何を目指しているのか、さっぱり分からない。この点もも態度を決めづらい要因になっているのではないか。
ともあれ、何も起こらないにせよ何か起こるにせよ、流血沙汰にならないことを祈るばかりだ。
<中国ジャスミン革命>特集記事
ネットで中国版「ジャスミン革命」の呼びかけ=ネット掲示板、ツイッター、フェースブックで反響広まる―中国、2011/02/19
<中国ジャスミン革命>天津よりツイッター実況=壮大な釣り?変革の兆し、2011/02/20
<中国ジャスミン革命>本当に失敗だったのか?「残念」な革命が残した大きな影響、2011/02/24
<中国ジャスミン革命>たった一つのつぶやきが中国政府を驚かせた=不思議な「革命」の姿を追う、2011/02/25