中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年02月21日
「民主化」という言葉に敏感な中国政府
中国政府は「民主化」という言葉に異様に敏感です。ニュースをつぶさに見ていくと分かるのですが、中国政府は国内の人権活動家の動きや民主運動全般について、国内向けの顔と国外向けの顔の両方を使い分けており、一般的に国内で報じられることはまれなのです。それだけ政府は、国内にさまざまな問題を抱えていることを自覚しているといえます。
例えば、人権活動家陳光誠氏に対する外国人記者の取材を政府が妨害した事件が先ごろ発生したのですが、17日の定例記者会見で記者がそのことについて外交部報道官に質問したニュースが、時事通信を初めとした国外メディアで報じられました。しかし国内メディアでその問答については一切報じられていません。
外交部は定例記者会見の問答の模様を毎回ウェブサイトを通じて公開しているのですが、そこの問答のところだけ抜け落ちているのです。それだけ、人権活動家や民主運動について「市民の目には触れさせたくない」という本音なのでしょう。
中東の民主化デモと中国の社会管理
国内メディアではデモなどの報道は一切ありませんが、エジプトなどの中東の民主化デモに戦々恐々としていることをにおわせる記事は多数報じられています。それを裏付けるように、胡錦濤総書記が「社会管理の科学化の水準を向上させなければならない」と述べたり、周永康中央政法委書記が「経済・社会発展の新たな情勢に応じて、社会管理を強化・革新しなければならない」と述べたりしており、とにかく「社会管理」を必死に連呼しているのです。
政府が「社会管理」に必死になっているのはほかにも理由があります。毎年全人代会議開催直前にあたる2月中下旬は、全人代会議に何とか議題持ち込んもらおうと、不満を抱える一部市民が政府機関を訪問・陳情によく訪れる時期でもあるのです。
ましてや今回は中東の民主化の波が押し寄せようとしています。その一方で政府の面子にかけても「年に一度のイベント」全人代会議を成功させなければいけないわけで、公安も本気で「治安維持」に当たる必要があったのではと感じています。
「中国ジャスミン革命」は不発だったのか?
89年の天安門事件でも最初は人数が少なかったものの、1カ月を経て運動は学生を中心に大きな広がりを見せました。今回の「ジャスミン革命」は不発だったかもしれませんが、「もう一度集まって政府に訴えたい」と思う市民がいる限り、今後もこの流れは継続していくのではないかと思います。そしてその流れの対処を政府が見誤れば、「もしかして」と思わせる事態に発展することは十分ありえると私は考えています。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。