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確かに薬物は検出されたが……
佟文選手側は処分を不服として、CASに異議申し立てし処分撤回を実現したのだが、その論理が面白いのです。ドーピング検査はAサンプル、Bサンプルと2回に分けて検査が行われ、いずれも陽性反応を示した場合にのみ、禁止薬物使用と認定されます
佟文選手の検体からは確かに薬物が検出されているのに、なぜCASは処分撤回を命じたのか。本当にドーピングなのかを裁定するBサンプルの検査では、公正を期すために「選手、あるいはその代理人が検査に同席すること」と定められているのですが、佟文選手側は出席を拒否。NHKニュースによると、立ち会い拒否は中国柔道関係者の指示だそうで……。
ともあれ国際柔道連盟は選手側の立ち会いなしのまま、Bサンプルの検査を強行。薬物が検出されたものの、「正しい手続き踏んでないから、Bサンプルの検査結果は無効ね」というCASの裁定を招くこととなりました。Aサンプルで禁止薬物が検出されても、Bサンプル検査の立ち会いを断固拒否すれば処分を免れられるという「新技」が生み出されたといいましょうか。
というわけで、なんとも不思議な裁定であります。一部中国メディアは「潔白を証明」との見出しで報じていますが、せいぜい「操作手順にミスがあっため、犯行の立証に失敗しちゃった。検察大失敗。正直、すまんかった」って感じじゃないでしょうか。
強くなりたいやつは中国に行け。肉食っているだけでどんどん強くなるぞ!
さて、もう一点、興味深い点があります。それは佟文選手から検出されたのが塩酸クレンブテロールという点。気管支拡張剤としてドーピングに使われることもありますが、それ以上に有名な用法はブタへの投与。いわゆる「痩肉精」というやつです。投与することで脂身が減り赤身肉を増やすことができるという畜産農家にとってはステキな薬ですが、人間が過剰摂取すると中毒症状を引き起こし、最悪死亡するケースもあったりするという悪魔の薬でもあります。
で、美味しい中華料理を食べただけで「ドーピング完了」してしまうケースがいくつか報告されています。。昨年には卓球ドイツ代表のドミトリ・オフチャロフ選手からも検出され、若きエースのロンドン五輪への道があわやおじゃんとなるところでした。
オフチャロフ選手は、「いや、ボク、中国で豚肉食べたなんで。お許しを」と涙目で主張。中国遠征に同行したコーチからも塩酸クレンブテロールが検出されたよ、同じ肉料理を食べたもん、と状況証拠を積み重ねることで、どうにか処分撤回に成功しました(過去記事参照)。
佟文選手も「私も中華料理食べただけなんス。許してほしいス」と熱く主張。CASの裁定では触れられていないようですけどね。オフチャロフ選手同様、佟文選手もたんに食事しただけという可能性は結構高いんじゃないでしょうかね。柔道選手のドーピングなら気管支拡張剤よりももっと大事なものがあるだろうし、なにより北京五輪出場選手のドーピングはもっとうまい方法で(以下、自粛)。
13億国民のドーピングはいつまで続くのか?
それにしても、中国で「痩肉精」が猛威を振るったのは1990年代末のこと。それから食肉監視体制はめちゃめちゃ強化されたはずで、最近は中毒事件とかあんまり聞かないのですが。
中毒は起きないけど、ドーピング検査にはひっかかっちゃう程度だけ、つまり友達以上恋人未満的微妙なさじ加減で痩肉精を使う技術が完成したんでしょうか?とすると、中国13億の民は「あなたもわたしもドーピング状態」なのかもしれません。