中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年02月24日
景気対策が招いたインフレ
卓見というか、現在の中国のおかれた状況を見事にまとめた記事ではないでしょうか。中国政府は2008年のリーマンショックに起因する世界金融危機の悪影響を食い止めるため、4兆元もの景気対策を行いました。
その中身はというと、農村戸籍保有者を対象に家電や車の購入に補助金を与える「家電下郷」「汽車下郷」などの消費促進策も盛り込まれていたものの、住宅建設や交通・農村インフラ整備が最大の柱でした。この景気対策は結果として、現在、中国を苦しめているインフレの原因の1つとなってしまいました。
世界金融危機後の景気対策では、「低価格の分譲・賃貸住宅の建設」が内需拡大と経済成長を促進する目玉政策の一つでした。低所得者向け住宅を確保しようとする政策が、低所得者の懐を直撃するインフレを招いてしまったたことは、皮肉といえるかもしれません。
現在の住宅価格の上昇率はかなり激しく、このままではいずれ不良債権化する可能性が懸念されます。中国政府は現地に古籍を持たない外地人による住宅取得制限、複数の住居を保有している、つまり投機目的と疑われるような住民に対しては、住宅ローンの貸付利率を引き上げるなど、様々な手段を講じていますが、あまり効果はあがっていないようです。
80年代日本と2010年中国の相似
さて、何だかんだいって政府を信用していない中国人だけに、最後に頼れるものはお金しかありません。今の好景気を受けて、貯蓄率はむしろ更に上がっていくことになるでしょう。この状況には80年代の日本の姿が思い出されます。当時の日本も高い貯蓄率を誇り、アメリカ経済などに多大な影響を与えました。
レーガン政権は強いアメリカを目指していたわけですが、防衛費の増強を進め、さらに財政赤字を拡大させていました。そこで、大量の長期国債を発行。日本をはじめとする海外から多額の資金を呼び込むため、高金利政策を採ったわけですが、結果としてドル高を生み出し、輸出の不振を招き、それがまた貿易赤字を生み出すことになり、いわゆる双子の赤字と言われる悪循環に陥ってしまいました。
現在の中国も同じく貯蓄率は高く、銀行に預けられた金は各所に影響を与えています。中国国内のインフレもそうですし、デフレ続きで相対的に安くなった日本の土地が買収対象となったりというのもその一例でしょう。そうした中、中国では不動産投資をできる人間は物価高騰でますます儲けることなり、貧富の差の拡大につながっています。一方、家を買えずに苦労している人間は増えるばかり。
中国政府もこうした状況については良くわかっているはずです。しかし、さまざまな対策もなかなかうまくいっていないのというは、既述のとおり。この点でも、バブル全盛期に不動産価格をコントロールしようとしてうまくいかなった日本(最終的には締め付けたあまりバブル崩壊を招くわけですが)とよく似ていると思います。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。