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2011年02月24日
「中国ジャスミン革命」は失敗だったのか?
さて、その結果といえば、多くのメディア、そして現地を訪れたブロガーが伝えているとおり、きわめて「さびしい」ものとなった。通行人ばかりで参加者らしき人は見当たらない、警官ばかりだ、演説しようとするなど行動を起こした人はごくわずか、現地での逮捕者も数人にとどまった。
デモは起きなかった、失敗だった、たんなる釣りにみんなが踊らされた、革命が起きて欲しいと思っているから過大に期待しているのでは?
そうした声をいくつも目にした。だが、本当に「中国ジャスミン革命」は「失敗」したのだろうか?この「残念」な活動が残したインパクトは、言われているほど小さなものではないと私は考えている。
呼びかけの波紋
3月の「両会」(全国人民代表大会と全国政治協商会議の総称、日本の国会に相当)、そして翌年に迫った習近平の国家主席就任をひかえ、中国共産党内部では権力争いの綱引きが苛烈に展開されている。「政治改革」に対する方向性の摸索も争いの場の一つだ。
いわゆる「太子党」(高級幹部子弟の派閥)の一部から提案された政治改革の提案(過去記事参照)、さらには温家宝首相による昨年の政治改革発言(過去記事参照)。そして逆に「社会的公正」は相対的なものであり、穏当に対処するべきと説く人民日報の社説(レコードチャイナ記事参照)……。
格差が広がるなかで、いかに「正義」を実現するか。換言すれば、いかにして中国共産党の統治の正統性が確保できるかが問われているなか、チュニジアのジャスミン革命に名を借りた「中国ジャスミン革命」の呼びかけは、政治的争いに影響を与えるカードとして機能することになるだろう。
「中国ジャスミン革命」という、今の情勢でメディアが無視しえない名前をつけたことで、今回の事件は海外のメディアが大きく取り上げるところとなった。「残念」なものであったにせよ、呼びかけがあったという事実は世界的に広がり、中国にとっても無視しえないものとなっている。
「中国ジャスミン革命」の呼びかけ文は今後、毎週日曜日午後2時に同じ場所で活動を続けるよう呼びかけている。しばらくは警察も軍もそしてメディアも日曜日に面倒な仕事を続けることになるだろう。それは反政府運動に対する中国政府のナイーブさを示すものとなる。
それはたった一つのつぶやきから始まった
チュニジアやエジプトのような事態が、現在の中国では起こらないだろうとの見方は変わらない。だが、「中国ジャスミン革命」が投げかけた波紋は、さまざまな広がりを見せ、政権転覆を果たせないまでも大きな影響を与えることになると考える。
それだけの影響を持つ今回の事件。発端はツイッターのある一つのつぶやきで始まったという。その波及の仕方は、人気SFアニメ「攻殻機動隊」に出てくる概念「スタンドアローンコンプレックス」を想起させるもの。まさにSF小説もかくやという不思議に満ちた伝播を果たしている。(続)
<リンク>
北京の「集会」1、2
BBC掲載の写真
<中国ジャスミン革命>特集記事
ネットで中国版「ジャスミン革命」の呼びかけ=ネット掲示板、ツイッター、フェースブックで反響広まる―中国、2011/02/19
<中国ジャスミン革命>革命という名の「散歩」=勤勉な中国当局と治安コスト、2011/02/20
<中国ジャスミン革命>天津よりツイッター実況=壮大な釣り?変革の兆し?、2011/02/20
<中国ジャスミン革命>たった一つのつぶやきが中国政府を驚かせた=不思議な「革命」の姿を追う、2011/02/25
デモと言うよりも政府への単なる嫌がらせレベルな運動ですが、これぐらいの規模でもうろたえてしまう中国政府が情けないですね。