持久戦に持ち込めば面白いジャスミン革命中国大陸のメディアがジャスミン革命に初めて言及したので、ちょっと読んでみました。環球時報なので電波が多量に含まれているのはお含みください。
*画像は20日、北京市の集合地点。博訊網の報道。転載が一部ポータルサイト止まりなのは、まだ党中央がジャスミン革命に対し態度を決めかねているからでしょう。
そこで、去年9月の中国漁船特攻事件と同様に、人民日報の傘下にある環球時報に社説を書かせたのだと思います。今回も環球時報が関連報道を一手に引き受ける事になるのでしょうか。
社説「世界を乱そうとするものは後を絶たない」(2011/2/25 環球時報) この社説、中国漁船特攻事件の後に、中国各地で起きた反日デモに対する記事と同じ色を持っているなという感想を持ちました。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。
デモを押さえ込んだ自信
まずは初回である20日を抑え込んだという自信から(社説は25日付)、これを書かせたのではないでしょうか。中国漁船特攻事件の時も、「デモは理性的だった」と誇らしげでした。「今後も起こさせない」という決意表明にも取れます。
まずは初回である20日を抑え込んだという自信から(社説は25日付)、これを書かせたのではないでしょうか。中国漁船特攻事件の時も、「デモは理性的だった」と誇らしげでした。「今後も起こさせない」という決意表明にも取れます。
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世の中には、世が乱れるのを望む者がいつもおり、中国が乱れる人間もなくならない。
チュニスで起きた「ジャスミン革命」は、エジプト、リビアなどの中東諸国にも波及したが、西側の一部の人は満足することなく、「ジャスミン革命」が中国でも起きる事を強く望んでいるが、彼らは情勢を見誤っており、実現しないのは必然なのだ。
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確かにエジプトのように政権が倒れたり、リビアのように国内が二分されるような大事には発展していないものの、集合場所の予告だけで党中央の神経をピリピリさせており、まずは成功ではないかと。
2月19日、博訊に北京、上海をはじめとする大都市の集合場所が掲載された時は、「事前に世界中に知れ渡るような伝達をしていたら、当然公安の目にも触れる。誰も来ないだろう」と考えいていたのですが、意外や意外。
もちろん公安は現場に出向いていましたし、一部が拘束されたのですが、それで済んでいるという結果に驚いています。2回目の27日もそれほど積極的な排除は行われませんでした。
発起人?もそこまでの急変は念頭においておらず、毎週続ける事で党中央にプレッシャーを与えるのを目的としているようですし。
「中国ジャスミン革命」、海外メディアの数が参加者よりも多かった
それに、去年の反日デモと違うのは、環球と参加者の向いている方向が真逆である点です。少なくとも、環球はジャスミン革命を応援してはいません。
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西側メディアは現在目を皿のようにして、中国における「革命」の兆しを探している。中国の人口は13億人であり、その中に「革命」を考える人がいてもおかしくない。1000万人規模の大都市なら、そういった人間を完全に絶つのは非常に難しい。
近頃、西側メディアの記者が集合地点に押し寄せ、数人による「ジャスミン革命」のパフォーマンスを見物したが、周囲を取り囲む者と記者たちの方が数人の参加者より圧倒的に多かった。一部の境外メディアは「デモ参加者」が「数百人」、「数千人」に達したと報じたが、中国が乱れるのを期待する心情を隠しきれていない。
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いつもの言い訳、「西側の偏見」編
次に、「革命」は西側の偏見や願望が作り出した虚構、といういつもの言い訳。中国お得意の言い回しで、「一部の人間」「極少数」という単語がありますが、大多数は善良であり一部の不満分子がうんたらかんたらというのは、天安門事件でもチベットやウイグルにおける騒乱でも使われました。
「西側メディアがありもしない革命を煽り立て」、「それに極少数」が乗ったという伝統的な型ハメから全く抜け出せていません。そういう虚構であってほしい、とする願望がこの記事を書かせたと言えます。
しかし、「数人の扇動者の周りに観客がいる」という環球時報の構図通りなら、私服の公安がマクドの2階からしっかりと監視する必要は無かったはずです。
王府井は人が集まらないように、公安が参加者や野次馬、通行人を立ち止まらせないようにし、散水車で目抜き通りを水浸しにしてしまいました。私の知る限りでは、こんなことは初めてです。
「ぺきん日記」さんが当日の様子を伝えています。
清掃車ジャスミン革命は起きそうもないが、なんか不穏な感じ。(ぺきん日記) 2005年の反日デモでお世話になりました。考察は私と相容れない部分もあったものの、基本的に反日サイトに現地情報を頼っていた身として、第三者視点の情報はありがたかったです。確か日本に帰国されていたはずですが、いつの間にか北京に戻られているようですね。
一見冷静を装い、西側メディアを嘲笑してはいるものの、見えないように必死に脚をばたつかせているのがわかります。水面に現れているのを外部に知られているのは承知のうえで、です。
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高尚な説教や素晴らしい理屈は、成功という最高の理論を越える事は無い。中国経済や社会の進歩は、今世紀初めの10年の人類の発展史上で、最高得点を叩き出した。賞賛、批判両方あるが、史上まれに見る変貌を遂げた。
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そして、党中央の政策は正しかった、それは経済発展という成果に如実に現れているではないかとの自画自賛で結語。環球の記事上では、呼びかけなど存在していないのです。
中共を振りまわし疲弊させることが目的か
ところで、ツイッターで黒色中国さんからいい事を教えてもらいました。
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bci_ / 黒色中国
『国防費と変わらない警察関連予算額』 http://j.mp/giVAnY …だそうなので織り込み済みではないでしょうか? @suisaigagaga 毎週厳戒態勢を敷くためのコストはどこに跳ね返ってくるのでしょう【「民主化集会…http://j.mp/i5O78tat 02/28 11:45
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黒色中国さんは最近ツイッター上で五毛先生(五毛党とは中国政府に都合がいい情報を書き込むサクラ)にしつこくつきまとわれています。こいつらを雇う費用もこの予算から出されたのではないかと思われるのですが、革命の立案者の真の狙いは「毎週やる」と宣言して党中央を振りまわし、疲弊させることにあるのではないかと。
2008年には暴動、地震、聖火リレー、オリンピックといった、通常の年よりも大きなイベントがたくさん開催されており、織り込み済みだったオリンピック以外では随分財政支出を強いられた事でしょう。
胡錦濤が近頃社会管理を更に厳格化すると明言しましたが、無駄なコストを費やしている体力が中国にあるのか、どこまで持ちこたえるのか。ジャスミン革命は最初から持久戦を選んでいたのかもしれません。
これに対し、胡錦濤が天安門事件も真っ青の大粛清で応えるのか、中東と同様の現象が起きてしまうのかはしばらく様子を見ないといけませんが。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。
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