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GDPが40兆円も増えちゃいました!足し算が合わない不思議な統計―中国

2011年03月05日

世界第2の経済大国となった中国。年フタケタペースでの急成長を続けているわけですが、先日発表された地方統計によれば、従来発表よりもさらに3兆5000億元(約43兆8000億円)もGDPがジャンプアップするという「快挙」をなしとげています。2011年3月4日付財経網を参照しました。


中华人民共和国 人民币元 / ComerZhao


先日、中国政府が発表した2010年のGDPは39兆8000億元(約498兆円)。ところが、「両会」ニュースセンター用資料に記載された中国31省・市の地域別GDPデータを合算すると、合計は43兆3000億元(約541兆円)となり、約3兆5000億元もの「誤差」が生じることに。

中国人民大学経済学院の陶然教授は、複数地域で重複カウントしていることが主要要因だと指摘しつつも、現在の統計方法では地方政府がウソのデータを提出する問題は避けられないと発言。GDPを構成する輸出、消費、投資のうち、前二者のデータ改ざんは難しいと指摘。投資が計画だけではなく、本当に実施されているかをチェックする必要があると提言しています。


官僚の「政績」作り

この問題についてはサンケイビズの記事「中国GDP、地方で「水増し」報告疑惑 やっぱり鵜呑みにできない」が詳細です。

全国成長率の10.3%を下回ったのはわずかに直轄市の北京市の10.2%と上海市の9.9%のみ。中国最大の経済都市であり、昨年は上海万博開催で潤ったはずの上海市が、中国全体の成長率では最下位という不思議な統計結果になっている。
などなど興味深い指摘あり。

さて、問題はなぜこういう「誤差」が生まれたのか。二重カウントという可能性ももちろんありますが、それ以上に地方官僚による業績作りのための虚偽報告ではないかと噂されています。地方官僚は業績(中国語では「政績」)を評価されてさらなる出世の道を切り開くわけですが、なんだかんだいって数字で見える結果を残すのがなによりのアピール。というわけで、ともかくGDP引き上げの道を突き進むことになります。


GDP至上主義からの脱却

格差社会の解消、不動産を中心とした物価上昇抑制こそが第12期5カ年計画(2011~2015年)のカギだ!GDP至上主義からの脱却を計るんだ!というのが今の風潮。第11期5カ年計画では年平均8%の目標だったところを7.5%に引き下げることになりました。

とはいえ、第11期5カ年計画期間は目標値8%なのに、実際には年11.2%とかけ離れた成長を達成していますので、目標値を引き下げたところであまり意味はないんじゃないか、と。GDP追求に価値は起きませんよ、という象徴的なメッセージと受け止めるべきでしょう。


地方官僚の暴走を止める方法ってある?

で、地方官僚の暴走をいかに止めるかという話になると、だいたい「官僚がGDPばかりを追い求めないよう、他の面での成果もきっちり点数化できる「政績」評価システムが必要だ」という話になるのですが、言うは易く行うは難しってやつでして。

以前には環境負荷を組み込んだ「緑色GDP」を算出して、エコな取り組みを評価する制度を作るんや!という取り組みもありましたが、見事に失敗。環境破壊をマイナス値として組み込むと、ほとんどの地方がマイナス成長になってしまったためともささやかれていますが……。

まあどんな評価軸を作っても、数字をごまかせてしまう絶大な権限が地方官僚にある限り、虚偽報告でなんとでも言い逃れできるようにも思いますが。中国共産党のえらい人もどういう制度作りをするべきか、頭を悩ましていることでしょう。

そんな彼らにアドバイスしてあげたいのは、西洋伝来の智慧。権力者の暴走を監視する制度があるそうですよ。「民主主義」っていうらしいんですが。中国でも試してみてはいかがでしょうか?

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 コメント一覧 (2)

    • 1. aquarelliste
    • 2011年03月05日 21:24
    • 地方政府の水増しだけが取りざたされていますけど、
      中央政府が過小報告してたりする可能性を指摘してるのって、中国はもちろん日本でもあまり見ないですね。
    • 2. Chinanews
    • 2011年03月06日 15:28
    • >aquarellisteさん

      確かにw

      まあ動機が見当たらないということなんでしょうけど。実は中央政府のほうがいじっていた、とかだったら、それはそれで面白そうですね。

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