中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年03月07日
「中国ジャスミン革命」への配慮も?
私もリアルタイムでテレビを通じて温家宝総理の活動報告を視聴したのですが、総じて昨今の「ジャスミン革命」に象徴される一般市民の動きに配慮したのではという感想を持ちました。
その1つが、第11次5カ年計画の総括で、「輝かしい業績」を発表する一方で「際立った問題」についても比較的長い時間をかけて言及した点です。
「われわれはわが国の発展において依然として際立った問題があることをはっきり認識しなければならない」と反省点を述べ、第11次5カ年計画で達成できなかった指標を「わざわざ」列挙して代表に注意を促しました。さらにはこれらのことを踏まえて今後注意すべき点を5項目に分けて述べたのです。「輝かしい業績」を強調するのみのこれまでの回顧とは一線を画す内容です。
これは、「国内に実際に存在する問題について、政府は逃げないではっきりと認識し、対処するつもりだ」という「決意」を一般大衆にアピールするためだ考えられます。
また温家宝総理は活動報告の中で、2011年の活動の重点として10項目を列挙したのですが、その中の6番目に挙げた「社会建設の強化と民生の保障と改善」で、実に8分ぐらいの時間をかけ、所得格差の是正、就業政策、社会保障体系、住宅不動産価格の抑制、医薬衛生改革の推進、社会管理、投書・陳情問題、住民の強制移転問題などなど、まさに住民が「今改善してほしい」と考えている切実な問題に対して一つ一つ具体策を提示したのです。
伏線としてのオンライン交流会
実のところ、所得格差の是正、就業政策、社会保障体系、住宅不動産価格の抑制などについては、2月27日に温家宝総理がネットユーザーと交流した際も言及し、政府としての方針を説明しています。
しかし今思えばあのとき、「政府活動報告の作成について絶対的な権限を持つ温家宝総理に今(2月27日に)出演してもらい、市民が直接総理に訴えかける機会を持てば、市民の不満は抑えられるだろう」と中国政府は考えていたのではと私は考えています。
私の分析が正しければ、中国政府は「2月に発生した大衆の集会は主に3月初めの全人代に向けたものだ」という認識を持っているとも言えるでしょう。
あのときのユーザーとの交流を踏まえ、今回の活動報告でも温家宝総理は特別時間を割いてこの問題の解決を強調したと考えられます。
台湾問題、分裂主義者への言及はなし
国内政策に対する言及の一方で、例年見られる過激で威勢のいい言葉は今年は聞かれませんでした。例年台湾問題や民族問題に絡んで、「国家分裂」や「3つの勢力」(テロリズム、分裂主義、過激主義)といった言葉が聞かれるのですが、今年はこれらの言葉は一言もなかったのです。
ただ宗教問題、民族問題、香港・マカオ問題についての言及は例年と比べると控え目になった一方、国防問題や「中国の外交政策」について温家宝総理は比較的長い時間をかけて説明しました。
温家宝総理は「強固な国防を確立し、強大な人民の軍隊を建設することは国家主権、安全保障、発展の利益“小康”社会の全面的建設を擁護する重要な保障である」と強調する一方、「われわれは平和、発展、協力の旗印を引き続き高く掲げ、独立自主の平和外交政策を堅持していく」と述べて、硬軟織り交ぜた外交政策をこれからも講じていくという意志を強調しました。
7日には楊潔チ外交部長の記者会見、14日の閉幕には温家宝総理の記者会見が控えており、どのような動きを見せるか見所といえます。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。