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<中国ジャスミン革命>「法治」よりも社会の安定を優先=変わらぬ中国政府の体質―政治学で読む中国

2011年03月07日

中東の政変と中国の社会の安定

『北京日報』に掲載されていた「维护稳定从每个人做起」(安定を維持するのは1人1人から)という社説が興味深かったので、これについて少し。

この社説は一言でいうと中国である意味(外国人から見て)最も関心の高い「中国ジャスミン革命」に関するもので、ネットで偽情報を発信し、非合法な集会を煽動するものがいるが、この目的は中国を不安定にしようとするもので、「安定こそが福であり、動乱こそが禍」なのだから、1人1人が社会の安定の重要性を自覚しなくてはいけないというものです。

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*画像は20日、北京市の集合地点。博訊網の報道


この「稳定」(安定)という言葉は中国にとって極めて重要な言葉で、中国で何か問題が起こる度に繰り返し使用される言葉です。天安門事件(天安門事件で使われた有名な言葉は上でも使われている「動乱」)の際にも使用されましたが、何と言ってもこの言葉が多用されのは、1993年の法輪功弾圧の時です。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。


法輪功が7月20日に弾圧された時、『人民日報』で大々的に公表されたわけですが、関係記事を見ても中国のどの法律に抵触するからという処罰理由は当初提示されておりませんでした。しばらくしてから、とってつけたように、許可をとらずに集会を開いたこと等を処罰の理由にあげる記事が掲載されましたが、最も印象深かったのが、社会の安定を害したという理由もそこに並記されていたことです。

今回の「中国ジャスミン革命」でも同じようなことが行われております。2月27日にデモがあるということで、外国人記者が大挙して押しかけたところ、政府当局の取材妨害がありました。それに対して3月3日開催された中国外交部の記者会見では、そのことについて質問が及ぶと外交部の姜瑜報道官は中国の関係法令を守らない記者が悪いと答えたのですが、その中で以下のようなやりとりがありました。

中国外交部・姜瑜報道官による定例記者会見(中国外交部ウェブサイト、2011年3月3日)

記者
「中国のどの法律の第何条に違反しているか、教えて欲しい」

姜瑜 「あの場所に行くには申請をしなくてはならないという関係規定に違反している。法律を口実にしてはいけない。問題の本質は、ある者が天下が混乱することを望んでいることで、中国にやっかい事を持ち込もうとしている。こうした動機を持つ者には、どのような法律も保護しきれない」

これを見ると中国は基本的に何一つ変わっておらず、法治主義とは言いながら、大事なのは、「社会の安定」という政治で、法律はそのための道具にしか過ぎま せん。いわゆる法学でいうところの「法による支配」です(それに対しいわゆる民主主義国家で求められているのは、国家権力そのものも「正しい法」に拘束さ れるという「法の支配」)。

最初の社説に戻りますが、なかなか興味深い社説で、ネット上で「偽情報」を流している者の目的は「中東や北アフリカの混乱を中国に持ってきて、中国を混乱させるものだ」などといった記載もありました。また、私の翻訳能力では、原文の格調の高さがなくなってしまうので訳しませんが、最後の段でもう一度社会の安定の重要性を訴えているところなどは、なかなかの名文で、そういう意味でも大変興味をそそられる社説でした。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。
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