中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年03月08日
特集報道組んだ中国メディア
中央テレビにしても、菅政権発足の時は日本のニュース報道と同時に速報していたにもかかわらず、第一報が出たのは日本時間同日午後11時が最初でした。ここから見ても、この前原氏辞任のニュースを中国メディアは当初扱いあぐねていたとも言えます。
その後、日が変わって7日午前0時ごろから前原氏辞任に対する論評がテレビでも報じられました。そして7日の朝からのニュース番組では、前原氏のこれまでの経歴や辞任の理由などが毎時繰り返し報じられるようになり、これに対して特約評論員や専門家による分析が紹介されました。ここから見ても前原氏辞職のニュースに対する中国のメディアの注目度は、かなり高いことが分かります。
「菅内閣の外交は未成熟」
前原氏についてはこれまで、多くの中国国内メディアが「右翼的な色彩が強い人物」と紹介してきました。中央テレビは「前原氏が尊敬している人物の1人が、(東京裁判で死刑判決を受けた)広田弘毅である」と紹介し、軍国主義的な考えを持っているとして警戒感を示してきたのです。
その中国にとって「目の上のたんこぶ」の人物が辞任したわけですから、肯定的な論調になってもおかしくないのですが、7日のテレビの報じ方は総じて控え目でした。奇妙なことに、評論員や専門家の分析は押し並べて、「前原氏辞任は、菅政権にとって深刻なダメージとなる」だったのです。前原氏辞任のニュースに対する中国政府の感情は複雑だと言えます。
その中国の「複雑な心理」が垣間見えたのが、7日放送のニュース番組「環球視線」における評論家の論評でした。番組に招かれた洪琳特約評論員は、「民主党の内政・外交政策には与党になってから固まっておらず、未成熟で、ずっと調整段階にある」とし、「固まっていなかったからこそ、釣魚島(尖閣諸島)での船舶衝突事件のように日中の摩擦が起きたのである」と分析しました。そしてこれからの日中関係について、「前原氏のような強硬派が辞任したとしても、政策の調整期は続くだろう」と予測しました。
これは「船舶衝突事件のような摩擦が今後も起こりうる」ことを暗に示唆したものかと私は思ったのですが、洪琳特約評論員は「強硬派の外相が辞職したことで、双方は慎重に事を進めることが予測される」とし、日中関係が今後冷え込むことはないだろうとの楽観的な見方を示しています。
日中外交の基調に変化なし
番組に招かれたもう1人の専門家である劉江永清華大学国際研究所副所長は、後任の外相となった枝野氏について、「中国にとっては耳障りの言葉を発している人物」と分析するとともに、「過去に台湾訪問で李登輝とも会見している」と指摘し、警戒感を示しました。
しかし、「枝野氏の外相任命はいわゆる過渡期の措置であり、枝野氏の最重要任務は管内閣の外交でトラブルをもたらさないようにすること」と分析し、保守派の枝野氏にしても、対中を含めた外交の基調はこれまで通りにせざるを得ないとの考えを示しました。
劉江永副所長は比較的日本には同情的な論評をする専門家でもあるのですが、この言葉の裏に「過渡期にある管内閣の外交力は明らかにダウンするだろう。これは外交の空白でもあり、中国にとっても付け入る隙はある」ことを暗に示唆しているのではと私は感じました。
どのような理由があるにせよ、このようなごたごたがあることは周辺国にとって付け入るチャンスをつくってしまうことになりかねません。足を引っ張るだけではなく、日本の国益としてこのようなことがあっていいのかということを日本人1人1人が考える必要があると私は考えます。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。
南方週末の記事を見た時もそう思ったが、
少なくとも、親日解禁の信号ではないかと思います。