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百家争鳴?それとも言いっ放しのガス抜き?「両会」代表の三農関連発言まとめ―北京で考えたこと

2011年03月10日

百家争鳴?言いっ放しのガス抜き?両会にみる三農問題の動き

今の北京は「両会」真っ盛り、毎日その日に両会で話された議題がニュースになって駆け巡ります(「両会」とは全国人民代表大会、全国政治協商会議の総称。日本の国会に相当)。国会というには何かが「議論される」という雰囲気はないですが、何か様々な意見が「言い放たれる」感じがするのがこの機会です。

未来に向けての意見具申か、言いっ放しの「ガス抜き」か
はともかく(後者な気もしますが)、セクターを問わず、「両会」出席者は、その圧倒的な人数により多くの「提案」を残していきます。

ここでは、個人的に関心を持っています「三農問題」についての気になる発言をまとめてみました。硬いメモ書き風ですが、良かったらご覧ください。


收采大蒜的农家女 / weichinali


*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。



○張暁山・全人代代表(中国社会科学院農産発展研究所所長)

・(農村には女性・子供・老人しか残っていないのではないかという問いに)それは誤解だ。7年連続の食糧増産をどう説明するのか。自分の理解では1)農業の機械化、2)農作業の社会科(アウトソーシング)、3)現代農業の担い手がプロ農家(=篤農家、原文「専業農個戸」)になっていることが(増産の)要因だ。

・都市農村建設用地割当バランス制度(訳注:うーん、訳が難しいですね。原文は「城乡建设用地增减挂钩」)は耕地保護のための発意だが、農地や農民の利益には目もくれず、都市の拡張、土地譲渡金の獲得に地方政府が走ってしまっている。政策の問題は政策自体にはなく、体制の中の深い矛盾である。
(「都市農村建設用地割当バランス制度」とは新たな農地を確保したら、その分別の地域の農地を住宅地などに転用できるという制度。僻地の農民をマンションに住まわせる、複数の村を合併し一つの団地に住まわせるなどの手法で、元の宅地を確保し耕地に転換する動きが広がっている。詳しくは過去記事「数字合わせの食料安全保障=内情は深刻な状態に」「中国7億人の農民が怯える「新農村建設」=中国各地で農民暴動が頻発する背景とは」参照)


○銭克明・全国政治協商会議委員(農業部市場及び経済情報司・司長)
・都市と農村の労働市場が一体化した後も、これまで農家の土地への投入に労働力のコストはカウントされてこなかった。今は出稼ぎをする「機会費用」と見比べての農作業従事であり、今後の新しいチャレンジだ。

・土地の私有化には反対。土地は就業機会へのクッションとなっていて、社会的コストを減らしている。


○陳錫文・ 全国政治協商会議委員(中央農村工作領導小組弁公室主任)
・(上記「都市農村建設用地割当バランス制度」に対して)一部地域で村の合併により建設用地を確保しようとしている動きに対して)村の形成は何百年に渡り、血縁地縁関係が重要な役割を果たしている。世界のどこを見ても建設用地の割当のために農村住宅を取り壊し、村を壊しているところはない

・農民をアパートに住まわす時には、彼らの生産方式まで変えなければならない。さもなくば、収入は増えずに支出は増えるばかり。最初の3年は、管理費無料、水・電気無料だとかのせられて住んでいるが、3年後はどうするというのだ?

・耕地は占有できないので、農民の住宅を壊し、村を合併する。そして、実際に建設用地の割当が来たら都市近郊の一番の農地をつぶしてしまう。今は野菜が値上がりしているが、都市近郊の野菜が無くなったのが原因だ

・地方の幹部はこう嘆く;中央政府は農業を重視するというから、そうしないわけにはいかない。でもいくらやっても苦労ばかりで、GDPの成長に対してはマイナスだ、(2006年の農業税廃止後)財政収入への貢献もない。そんな農業をどう重視しろって言うんだ?
*以上は3月8日付新京報掲載分。


○韓長賦・全人代代表(農業部部長)

・昨年の農産品価格上昇は、インフレ期待、食糧の国際価格上昇、投機マネーが起こしたもので、それに農業生産コストと土地コストの増加も関係がある。


○ 中国民主促進会
注:中国には実は共産党以外にも結構政党がありまして、中国民主促進会もその一つ。政治協商会議は、共産党と統一戦線を組んでいる、「民主党派」と呼ばれる知識人などを主とした「野党」(まあ共産党が「永久与党」なので野党と呼ぶのはおかしいですが)との「協商」(協議)の場として機能しています。

・「土地管理法」に土地請負期間を満期後自動更新とする(=請負経営期限を設けない)と定めるべきだ。長期に安定した土地請負関係を構築するという第17期三中全会の精神を実現するものである。また、土地の規模を固定化することによって、家族が増えても土地が増えるものでないと農民に認識させることにつながり、結果として計画出産政策(いわゆる一人っ子政策)にも資することになる。
(現在の土地請負制度は、一定期間ごとに村民の土地を回収し、新たに分配し直すと想定されている。ただし例外も増えている。上記提案はほぼ農地私有に近い状態にし、子どもが増えても農地の割当が増えないという状況にするべきと提言している。)



○謝旭人・財政部部長
・昨年の全国国有土地譲渡金(土地使用権払い下げ)の総収入は前年比106%増の2兆9397億元(約36兆7000億円)。(伸びの大きさは)土地需要が高いことと、立ち退きコストが高まっていることによる(払い下げ前の土地確保費用の増大)。これらの資金を農村の水利や低価格公共住宅(保障性住房)建設に使っていなければならない。


○劉錫榮・全人代代表・全人代法律委員会副主任委員(元中央規律委員会副書記)

・今の時代、土地で儲けられないのは能力のないリーダーと見られ、土地転がしができる書記や市長ができるリーダーと言われている。だが、こういう言い方は批判されるべきだ。

・土地譲渡による収入は全て政府予算の中に組み込むべきだ。農民が土地を提供して貢献したわけだから、予算は社会保障、高齢者福祉、医療、教育、技術トレーニングなど、農民に対して使われるなければならない。予算に組み込まれれば、(各地方の)人民代表大会も用途を監督することが可能となる。
*以上は8日付京華時報掲載文。

*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。

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