中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
街角で強盗に遭えば、監視カメラが自動的に通報してくれる。
ガス管が破裂しても通報はいらない。警察、消防、ガス会社がすぐにかけつけてくれる。
真夜中、団地に不審人物がやってきた。監視カメラは自動的に情報を収拾。もし異常が起きればすぐに警察にデータを送る。
そんな「夢」の世界が現実化しようとしている。
「重慶の監視カメラ、自動的に警察へ動画を送信し通報=3年以内にカメラ50万台を設置(重慶晩報、2011年1月12日)
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重慶市では今年1月、「平安重慶・緊急連動監視システム・デジタル化建設プロジェクト」が始動。2013年末までに50万台の設置を目指している。もっとも現状でも31万台が設置されており、50万台という数が格別多いわけではない。北京市、上海市の設置台数にいたっては400万台以上に達しているという。
重慶市の新プロジェクトで、特筆すべきは50万台の監視カメラがすべてネットワーク化され、当局のシステムとリンクすること。冒頭の引用文が示したとおり。都市生活のあらゆる局面をカメラがモニタリングし、泥棒がいれば警察に、火災が起きれば消防局に、反政府デモが起きれば武装警察にと即座にデータを送信してくれる夢のシステムだ。
3月9日付聯合早報によれば、システム建設を受注したのは米シスコと中国のHikvision社。計150億元(約1880億円)以上の大型プロジェクトとなる。年々増加する中国の治安対策費が米国の雇用を生み出してくれるというわけだ。
重慶市以外の監視カメラ状況
近年、中国各地の大都市では年々監視カメラの設置台数を増やしている。2008年、北京市には大型デパート500カ所に顔識別システムを搭載した監視カメラを設置。2010年の広州アジア大会では、9億9000万元(約124億円)を投じて、監視カメラ26万8000台を市内各所に設置した。また会場及びその周辺には1万2000台の監視カメラを設置。治安指揮センターに24時間リアルタイムの動画情報を提供した。
3月10日付杭州網が報じたのは、監視カメラ及び録音マイク付きタクシーの導入。乗車している間、ずっと後部座席が録画され、車内の会話も録音され続けるというもの。客は乱暴できず、運転手も悪さを働けない、みんなにとって幸せというお話だ。なおデータは車内に保存されネットワーク化されていない。
重慶市の新システムと比べると、サイバー度は一段低いと言えるだろう。とはいえ、高速の携帯回線、無線LANの普及が進む中国だけに、タクシーやバスの動画がリアルタイムで警察に送られる日もそう遠くはなさそうだ。