中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年03月12日
選挙の導入だけが政治改革じゃない
中国共産党が一足飛びに一党独裁制を手放すとは誰も思っていないだろう。だが、政治改革とは何も投票で政権党を決めることのみを指すものではない。むしろ今必要とされているのは、生活に直結する問題だ。すなわち、権力の操り人形ではない公平な司法であったり、政府の鶴の一声で個々人の財産が奪われたりしない枠組づくりだ。
昨年、温家宝首相がたびたび政治改革を口にしたが、想定されていたのは司法改革や、共産党独裁は保持した上での基層自治体での一部選挙導入といった初歩的な取り組みだろう。太子党のグループが党内選挙導入を求める提案書を提出したり(過去記事「共産党の末端からトップまで一部で選挙導入を=高級幹部子弟グループが驚きの提案」)、あるいはリベラル系の新聞「南方週末」がベトナム共産党の選挙に注目する記事を掲載したり(過去記事「中国がベトナムから学ぶこと=ベトナム共産党大会報道を読む」)と、斬新的な政治改革への期待は高まっている。
ガス抜きとしての政治改革推進
年10万件を超える「群衆事件」(デモや暴動、抗議運動など人が集まって騒ぎとなる事件)が起きている中国。先月から続く抗議集会の呼びかけである「中国ジャスミン革命」への対応を見ても、現行体制の問題は政権に深く認識されているように思われる。ガス抜きの意味も含めての政治改革は喫緊の課題のように思われるが……。
こうした状況で、三権分立及び私有化の否定を一党独裁体制の堅持と並べて、絶対に阻止するという強い姿勢を見せた呉委員長。経済成長は進む一方で、さまざまな問題が起き緊張が高まるなかで、今後の方針をめぐって権力内部での綱引きが行われていることを感じさせる一幕となった。