今日も異常なし=ジャスミン革命の対峙は続くさて、「中国ジャスミン革命」であります。北京市中心部に治安要員をばら撒き、人が集まるのさせ許さない体制で臨んだ先週はデモどころではありませんでしたが、これにより毎週デモに警戒しなくてはならなくなったのです。ジャスミン革命発起人は、「微笑革命の疲労戦をやろう!微笑革命の持久戦をやろう!」と呼びかけており、中共がまんまとハマってしまったといえます。

無駄な警戒をしてコストを膨れ上がれば、公安関連のボスである
周永康が焼け太りするだけでしかないのですが、どこまでこの状態は続くんでしょうか。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。
ジャスミン革命計画の新聞社説、怒濤の掲載へ
先週日曜日の第3回集会が失敗した後も、革命封じ込めの論説が毎日のように発表されています。
中国にアメリカ式モデルのコピーは出来ない(2011/3/9 求是理論網)
基礎からビルまでを考える(2011/3/9 人民日報海外版)
中国は中東ではない中東の混乱を中国にもたらそうとする陰謀は失敗する運命(2011/3/10 人民日報海外版)
安定こそ中国人の最も必要なもの(2011/3/10 環球時報)
西側の民主は中国を必ず潰す(2011/3/10 聯合早報)
確固として規定の目標に向かって踏み出そう(2011/3/11 新華網)
呉建民:中東での体験談(2011/3/11 人民日報海外版)
幸福切実な期待と沈着な追求(2011/3/12 人民日報海外版)
上記はいずれも「中国ジャスミン革命」を念頭に置いた論説もの。「
生活の安定が何より大事なので、「革命」には参加するな」と呼びかけるタイプと、
「三権分立は中国にそぐわない」とする従来の持論を展開するタイプの2種類が存在します。後者は呉邦国全人代常務委委員長がわざわざ補強してましたね。「ごほうこく」と打つと、「ご報告」と変換されてしまうので、そろそろやらねばと思っていたIME辞書登録をしました。
司法は共産党の支配下にあるべし、中国の特色ある社会主義は「三権分立」を否定する
呉邦国「国家の基本制度が揺らげば、国家は内乱に陥る」(2011/3/10)
中国の特色ある社会主義の道を堅持するために最も重要なのは、正しい政治的な方向を堅持する事だ。国家の基本的な制度などに関わる重大な原則問題では動揺させられない。
これが揺らげば、社会主義の近代化が振り出しに戻るばかりでなく、既に得た発展の成果も失う事になり、国家も内乱の淵に陥るだろう。
原文は5行なのですが、狂ったように中国の特色ある社会主義を連呼しまくっています。
呉邦国は毎年同じように政治改革については否定的な発言をしており、特に今年だけが厳しいわけではありませんが、今年は今年は内乱といった極めて目を引く単語を使って、改めて三権分立を否定しています。当然ジャスミン革命の求める民主などを念頭に置いた発言ですが、危機感の裏返しでもあります。政府高官が、ジャスミン革命についてこれほど明確に政府の姿勢を表したのは初めてです。
安定した生活を人質にするメディアの論説
中国メディアの論説といえば、1989年の天安門事件前夜に学生運動を過激化させ、結局取り返しが付かなくなった人民日報の社説
「旗幟鮮明に動乱に反対せよ」や、2005年の反日デモで参加者を厳しく断罪した
「本質を見極め、違法行為には厳罰を」などの過去があります。つまり、デモ参加者への対決姿勢を打ち出すあまり、逆に大炎上してしまったというもの。
今回の「中国ジャスミン革命」がらみの論説では、「中国を揺るがす陰謀は一部の国内外のメディア関係者であり、大多数の人民はいい人だ」という、いつものラインから外れる内容ではありません。たんに加担しないよう呼びかける程度です。「参加者は非国民だ」などと過剰なレッテル貼りをすれば、大炎上の再演が免れないのを理解しているからでしょう。
今回の論説ですが、大筋は「国内が混乱に陥れば平穏な生活に影響する。安定した生活こそお前らの望むものだろう」、と安定を人質にとるやり口。中東の混乱だけを伝え、その後にどうなったのかを報じることがない。いわば混乱か安定化の二択を迫る、非常に酷いやり方であります。
「一人っ子政策」がなかったから中東では革命が起きた?
呉建民は中東に視察に行っておきながら、報告会では「
中東には計画出産がないから人口抑制が効かず、労働人口の増加に供給が追いつかない」といった内容を語っているのですが……。中東を批判しておきながら、足元の問題、計画なしに大学生を増やしまくって、学生の求める職と企業の求める人材との間にギャップを作り出した問題についてはスルーしています。どうやって対応するのか?文革よろしく「下放」ででも対応するのでしょうか(「下放」とは知識人を農村に追放し、労働教育に従事させた制度を指す)。
「中東の混乱によって、我が党と政府が一貫して提唱してきた発展、改革と安定の関係を上手く処理することが重要であると証明された」との発言も。呉建民に外交以外の問題を語らせて大丈夫なのか、と心配になるほどの意味不明ぶりです。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。

辻原 登
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これは意外な視点ですね。