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中国本土ミステリー界の総本山「歳月・推理出版社」に行ってきた―北京文芸日記

2011年03月15日

歳月・推理出版社へ行く

御手洗熊猫氏の長編小説『島田流殺人事件』だが、ネットショッピングサイト淘宝でしか販売されない自費出版となった(その経緯については(過去記事「気鋭の中国若手推理小説作家・御手洗熊猫の渾身の傑作が自費出版で販売される理由」)を参照)。

だがタオバオ利用のための口座開設が難しい。熊猫氏にそのことを話したら、歳月・推理出版社にボクの分を入れてまとめて送ってもらえることになった。

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14日は到着した本を取りに行く日だった。 やっと歳月・推理出版社に来ることができたのかと感慨深い気持ちになった。

*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。

留学しているときにキオスクで歳月・推理を見つけたときは中国にもミステリマガジンがあるのかと感動した。興奮のあまり下手くそな中国語のメールを編集部に送り、返事が来やすいように「ボクは北京に留学している日本人ですけど」とわざわざ書いた。地下鉄で歳月・推理を読んでいると男が近寄ってきて、「オレはこの本の編集者なんだけど」と言われたときは人の縁を感じたものだ。

「プレ七夕と七夕当日の出来事」トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く、2009/07/14

「遊びに来いよ」と言われても用事もなくお邪魔をするのは悪い気がしたが、今回ようやく正当な理由を持って邪魔しに行けるのだ。

熊猫氏が事前に連絡してくれたので、本を受け取るだけで終わらず編集長室にまで通されると「破顔」という言葉がふさわしい笑顔で迎えてくれたのが、ボクが以前地下鉄で会った張宏利編集長だった。そして彼に、昔地下鉄の車輛で会ったことを覚えていますかと尋ねると、数秒経ってから


(゚Д゚)うぉぉぉ


と叫ぶ編集長にハグされた。

覚えてくれていたらしい。そして「遊びに来い」は社交辞令じゃなかったようだ。

会話は好きな作家から始まり、日本でどんな中国ミステリだったら受けるかなどの質問を経て、今後の会社経営や将来の中国推理小説業界についてまで及んだ。

実際に推理小説業界に従事している張編集長の言葉には経験から来る重たさと確実な未来性があった。そして会話にはやはり東北の大地震のことも出て来た。張編集長は唐山(1976年に大地震が起きて少なくとも24万人以上の死者が出た土地)出身なので地震被害には他人事とは思えないらしい。日本にいる家族の安
否を尋ねられたが、北海道の実家は幸いにも被害は皆無だったので大丈夫だとしか言えなかったが。

その後に編集の古里さんと歳月・推理の姉妹誌推理世界を担当している谷雨さんとも会った。古里さんは出版社に関するメールの送受信を担当しているそうで、ボクのメールに返信してくれた人である。

二人との会話はボクを勇気づけてくれた。ボクが、たまにトリックの説明を読んでも理解できない作品があるがその原因がボクの中国語能力にあるのか作者の力量不足によるのかわからないと打ち明け、例を挙げると


「あっ、それ中国人もわからないから作者のせい」


と快刀乱麻を断つがごとく答えてくれたのには胸がせいせいした。

ボクが友人の分と合わせて熊猫氏から購入した《島田流殺人事件・上下巻》が8セット16冊、編集部の好意でプレゼントされた本が6冊。

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これらを詰め込んだ鞄の持ち手が掌にひどく食い込んだが、悪い気はしなかった。淘宝に登録できない中国語レベルの低さをこの日ばかりはありがたく思った。

*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。

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