パニック買いで中国政府が沈静化に乗り出す
中国人は基本的に政府を信じていない反面、口コミに異常に弱い面があります。
最近なら携帯のショートメールやマイクロブログで、もっともらしい文面で煽られると、情報弱者たる大多数の中国人がパニックを起こす事態がありました。
2003年のサーズが好例で、「お酢を飲むといい」、「いや冷房をかけまくれば菌は死滅する」、「『板藍根顆粒』(解熱剤)が効く」などのデマが流れ、買い占めが起きました。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。
お酢は殺菌効果があるので、拡大解釈が広まったと思われますし、冷房は以前から中国で信じられているある種民間療法的な対応です。以前はホテルに入るとやたら冷房が強かったのを覚えています。
板藍根顆粒はお汁粉みたいな味で私は好きなんですが、これらのデマや買い占めは政府の隠蔽が反動となって引き起こしたパニックとも言えるでしょう。何せサーズは内部告発があって初めて明らかにされたんですし。
日本で起きた東北大地震が、またパニックを引き起こしています。
中国で“塩買い占め騒動”海水汚染の風評広がる(2011/3/17 産経新聞)
中国国内で、福島第1原発の放射能漏れ事故で海水が汚染されるとの風評が広がり、消費者が食塩の買い占めに走る現象が起きている。中国当局は「食塩の備蓄は十分ある」と沈静化を図っているが、当局の隠蔽体質を知る国民は耳を貸さず、北京市内でも、スーパーの棚から食塩が消える事態となっている。
中国人は中国政府を信じないのと同様に、日本政府も同じように隠蔽していると考えます。それ自体は悪い事ではないし、むしろ日本人より賢いと言えます。生活の知恵でもあるでしょう。
ただ、適切な情報が与えられていても、それを処理する知識がない人民が大半なので、安全宣言をすればするほど怪しいと態度を硬化させているのも事実です。
全国的なパニックを沈めるために、新華社が正しい知識と情報を報じました。
専門家「ヨウ素含んだ食塩は被曝防止作用小さい」(2011/3/17 新華網)
「中国の専門家」は信用されていないと理解しているのか、WTOの声明として「ヨウ素は解毒剤ではなく、全員が服用できるものではない。公共衛生機構の指導下で服用してください」との呼びかけがなされています。
続いて、「ヨウ素の過剰摂取は副作用があります」との中国疾病コントロールセンター研究員の談話を発表し、沈静化に務めようとしています。
これまで「我が国の環境に影響は無い」「原子力事業に変更は無い」と発表し、被災地からの中国人引き上げも愛国心を煽るイベントにして、東北大地震を上手く乗り切れてきた中国ですが、思わぬ所でつまづいたものです。
中塩「各地の備蓄は十分提供に問題なし」(2011/3/17 新華網)
※新華網の報道。
地方「食塩は不足していない、パニック買いは必要無い」便乗値上げは厳罰(2011/3/17 新華網)
日本の原発事故が注目を集める中、ヨウ素入り食塩が被爆防止になるとのデマで、一部地域でヨウ素入り食塩の買占めが起きているが・・・(後略)
昨年9月にディーゼル油が不足した際、投機家の格好の的になり買占めと釣り上げを食らったディーゼル油はたちまち高騰し、GSにトラックが幹線にはみ出して給油を待つ事態となったことがありましたが、知識面の補足の次は感情面のケアです。
各地の専売公社や当局者が「塩は十分足りている」「価格は監視する」と声明を発表させられることになりました。
北京市、上海市、浙江省、江蘇省、南京市、広東省、福建省、海南省、江西省、湖北省、湖南省、安徽省、重慶市、四川省、雲南省、貴州省が、一斉に「足りている」宣言。
かなりの広範囲に渡って「デマ」が拡散している印象を受けます。少なくとも、記事にあるような一部地域ではなさそうな広がりで、これだけの地域がデマを打ち消す必要性があったのでしょう。
上海市は「食塩『など』の商品供給は確保されている」と、他製品への波及を懸念してか、更なるパニックを見越して先手を打つ発言もしており、そういう兆しがあるのかなと勘ぐる次第です。おお、砂糖や醤油にも波及しているとか。
確かに、他の食品への波及は怖いですよね。それでなくても物価上昇が続く中国、民心を沈めるにも新たな財政出動を求められかねない事態です。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。塩屋 (まーすやー) 青山 志穂
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