中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
こうした不安ほど、原発を促進しようしている中国にとってまずいものはなく、そのため反論が新聞などに掲載されることになります。理論構成として、事故を起こした日本の原発に対して中国は大丈夫だという形をとるため、どうしても中国は日本と違うという形の記事になってしまいます。
そうした記事として『環球網』に掲載されていたのが「原能源局长批日本核电处置失误 中国完全能应对」(原子力エネルギー元局長は日本の原発の処置の失敗を非難し、中国は完全に対応できるとしている)です。
基本的な記事の内容は、日本の原発は1971年に建設された古いもので、それに対し中国の原発は技術的にも進んだものだから大丈夫だというものでした。
今回の原発事故では、水蒸気が内部にたまりそれが爆発を招いてしまったわけですが、その原因として日本の原発は蒸気の回路が、1回路しかなかったことを挙げております。1回路しかなかったため、水蒸気が放射能を含んでしまったわけだし、それがおかしくなると水蒸気を逃がすことができず爆発したとしております。
それにひきかえ中国のものは3回路あるので、放射線のないところで蒸気をまわすことができるので、放射能を含まない水蒸気を逃がすことができるなど、より進んだものを採用しているとしています。
その上で、日本(東電)の対応についても非難しており、地震・津波が発生してから福島第一原発が爆発するまでに8時間があったわけですが、その間に海水注入をするという決断を下していれば、これほどの大禍は起こらなかっただろうと述べております。
今回の原発の事故を巡る東電や政府の対応については、私もかなりの不信感をもっており、思いっきり批判しておりますので、普段であれば「結果論だけで意見するな」等いろいろ反論したくもなるところですが、今回特に申し上げることはありません。
そしてもう1つ同じ『環球網』の記事(「日自卫队怕遭辐射拒听首相命令 台媒称应学大陆解放军」(台湾メディアは大陸の(人民)解放軍に学べと述べている))を紹介させていただきますが、これはある意味、同じ延長線上にあるのではないかと思える記事です。
この記事は『台湾今日新聞網』と『読売新聞』の記事を基に書かれたものです。
前者によると、菅首相は15日、自衛隊にヘリコプターを出し、福島原発の消化作業に参加するように求めたが、隊員への放射能汚染を理由に自衛隊に拒絶されたとしています。それにひきかえ2008年の四川大地震の時、人民解放軍は「少しも死を恐れない」覚悟で四川に向かったと思いっきり比較しております。
『読売新聞』の「安全のはずが命がけ…怒る自衛隊・防衛省」という記事は、自衛隊が「安全だ」と言われて行ったら、命がけの作業をやらせらることとなり、東電や保安院に対する不信感が募っているという記事の紹介で、(情けない自衛隊に対し、)我々には頼もしい人民解放軍がいるという感じで締めくくっております。
ただ人の命ほど尊いものはなく、誰かのために誰かに死ねと言えるかというと極めて難しい問題です。そうしたとき、最終的に自衛隊でも、命令があれば、放射能の高いところにも赴かねばならなくなるかもしれません。しかし、そういう非人道的な命令に、何の矛盾も感じることなく、ただ従うだけの軍が存在することが良いことなのかどうか、もう一度考えてみるのも必要なのではないでしょうか。
※ただ、「軍」とはもともとそういうもので、兵士とは上官の命令に絶対服従であり、兵士が自分で何かを考えるようでは戦争にならないというのはわかります。だからこそ、その前に上官たる将官がきちんとその命令の人道性・実行可能性等を考えることが極めて大事で、その意味で今回自衛隊がいろいろ考慮したことについて私は間違っているとは思いません。
*当記事は3月17日付ブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。