中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年03月25日
病院に客引きが出るわけ
病院の客引きのことを「医托」というそうです(百度百科)。大病院やら駅やら、あるいはネット掲示板での宣伝やらを通じて、「うちなら安いよ、早いよ、楽ちんだよ」と客引きをする行為。で、のこのこついていくと、小さな診療所で満足なサービスを受けられなかったり、ひどい時には闇医者の診療を受けることになるという……。
中国の医療問題はきわめて深刻な状況にあります。俗に「看病難、看病貴」(医者に診てもらうのは大変、治療費もバカ高)といいますが、大病院や有名な医者の順番をゲットするのは超大変。長蛇の列に並ぶか、受付券を転売するダフ屋から買うかという選択を迫られます。で、医療保険も未整備なので、国有企業やら公務員なら医療費補助も受けられますが、一般人はバカ高の医療費を支払わなければなりません。医療保険改革が実施されて改善した部分もありますが、まだ加入できない人もいたり、場合によっては適用できなかったりと困ることもしばしば。
一方で町医者というか、診療所は大手病院と設備や技術の差が大きく、誰も行きたがらないという……。なので無理やり客引きするような行為が横行していたりするんでしょうね。
お役人と弁護士のディスバトル
さてさて、なぜ今回、「医托」に関する記事を書いたかといいますと、現在、中国でちょっとした話題となっている事件がこの「医托」絡みなのです。江西省南昌市では現在、「医托撲滅キャンペーン」を実施中。で、キャンペーン絡みの番組を同市テレビ局が撮影したのですが、そこで事件が勃発。
同市衛生局研究員と弁護士がゲストとして参加したその番組では、「医托」がいかに悪いか市政府が取り締まりをどれだけがんばっているのかを紹介して終わりという構成にする予定だったはずが、お呼ばれした弁護士が「役人がオフィスでだらだらして現場にでないからダメなんだろ。問題は衛生局にある。君らがちゃんと管理していれば問題は起きなかった」云々とディスったところからバトルが勃発。
研究員は「笑わせるね。ちゃんと法律勉強してからテレビに出やがれ」と返したところから、お互いに相手を罵倒するバトルに。番組は放映中止となったのですが、関係者が問題のシーンを動画共有サイトにアップしたことから世間に広まり、大変な騒ぎに。
ネット民の評判は「研究員の民度低すぎ、煽り耐性なさすぎ」「弁護士もろくなやつじゃねぇーな」というのがメインのよう。ま、確かにそのとおりかもしれませんが、「「医托」悪いですね~、政府がんばってますね~」というだけの番組でもつまらなかったわけで。もうちょっと前向きなバトルだったら、流出しても逆に出演者の評価があがったりしたんじゃないか、そういう番組が見たいぜと思った次第です。