中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
増加傾向にある批判的な報道
東日本大震災と津波災害、福島原発事故に対する中国のマスコミの反応の変化は、これまで当ブログでも何回か取り上げてきましたが、ここにきて中国中央テレビを初めとした国内のマスコミは、日本政府や東京電力に対する批判的な報道を多く取り上げています。(関連記事「【東北関東大震災】変化した中国メディアの震災報道=賞賛から批判にシフト」KINBRICKS NOW、2011年3月26日)
中央テレビ記者の執拗な質問
しかも中央テレビで言うと、ここ一週間ぐらいは中央テレビ記者による、日本政府の担当官や東電の幹部に対する直接的な取材が多くなってきており、より踏み込んで事実を伝えたいという意気込みが感じられる報道ぶりとなっています。
例えば、3月29日に日本政府の外国メディア向けの記者会見が行われた際、中央テレビ記者が自ら日本語で質問し、原発の敷地内でプルトニウムが検出されたことを受けて「今どのような対策を取るべきか」と原子力安全・保安院の西山英彦審議官に問い詰めました。
その様子は中央テレビでしっかりと報じられ、西山審議官の「悪影響は及ぼさない」との答えに番組キャスターは「何ら対策を取る必要がないという意味だ」と断じました。西山審議官の答えに納得しない中央テレビ記者は30日に同氏に単独インタビューを敢行しており、この様子も中央テレビでしっかりと報道されています。
また4月4日にオーストリア・ウィーンで開催された国際原子力条約締約国第5回再検討会議開催後に、日本の代表が記者会見を行った際も、中央テレビの記者が経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官や川原田信市文部省顧問に対し、「原発事故から1カ月経とうとしているがそこから教訓を汲み取ったのか」という厳しい質問を投げ掛けています。
中央テレビで記者がこれほど頻繁に日本政府の高官に対する取材を行い、それがテレビで報道されることは非常にまれです。そのような状態の中、5日には東電が低レベルの汚水を海に排出したというニュース、そして6日には中国国内でホウレンソウから微量のヨウ素が検出されたニュースが報じられたわけで、中国政府の日本に対する「ガマン」もそろそろ限界に来ていることは容易に想像できます。
今のところは日本政府や東電の対応を暗に批判している中国国内メディアの報道ぶりですが、明確かつ直接的に日本政府を批判した論調ではありません。
大々的な非難キャンペーンにシフトする可能性も
6日の北京放送(電子版)は、汚水を排出した東電の行為について「軽率である」とは断じましたが、記事の中で劉江永清華大学国際問題研究所副所長は汚水を海に排出した東電の行為について、「原子炉に注水しなければ、空気中に放射能が拡散してしまうし、注水すれば海の中に放射能が流出することになる。東電としても板ばさみの苦しい選択だった」と分析し、一定の理解を示しました。
このような論調は東日本大震災に見舞われた日本に対する一定の同情がまだマスコミにも残っているとも解釈できますが、言い換えるならば中国国内のマスコミは現在、「次の段階の対日報道戦略」について中央指導者からの指示を待っている状態なのだと考えられます。
このまま東電と日本政府の不手際が続くと、中国政府の堪忍袋の尾が切れて大々的な非難キャンペーンにシフトするとも考えられます。今後周辺諸国の日本に対する目がますます厳しくなっていく中、日本政府としてどう対処していくか注目すべきでしょう。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。
いやでも、今回は日本が悪いか…世界の皆さんごめんなさい…