中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年04月11日
米人権報告がとりあげた中国の問題
米国の人権報告は8日に発表。先日、北京首都国際空港で拘束された芸術家、人権活動家の艾未未氏、作家の冉雲飛氏など、今年に入り人権活動家が相次ぎ逮捕、「失踪」している状況に触れた。またネット検閲の強化についても懸念を表明した。
中東のジャスミン革命、そして「中国ジャスミン革命」と題した抗議集会の呼びかけを受け、中国では今年2月より取り締まりを強化。「中国ジャスミン革命」とは無関係と見られる人権活動家を複数拘束した。さらに当局から一切のアナウンスがない「失踪」というケースもある。またツイッターで中国政府批判の発言をしたネットユーザーが派出所に呼び出され事情聴取された例も複数伝えられている(ネットスラングでいうところの「お茶させられる」)。
ネット検閲については、「ジャスミン」「ジャスミン革命」などの言葉が検索できないNGワードに指定されたほか、米グーグル社が提供するGメールなどのサービスに対する妨害、ネット検閲を回避できるVPNサービスの封鎖などを続けている。
中国が批判する米国の人権問題
中国は12年前から毎年、米国の人権状況を批判する報告書『米国人権記録』を発表している。今年も米国に呼応して、遅れること2日で発表した。全文は国務院のサイトで公開されている。
全6章立ての構成は以下のとおり。
(1)声明、財産、安全について
米国は世界で最も暴力的犯罪が深刻な国。毎年5人に1人がなんらかの犯罪の被害者となっており、その比率は世界最悪である。
(2)市民の権利と政治の権利
米国政府による市民権、政治的権利の侵害は深刻だ。空港でのスキャニング、警察による暴力と自白の強要、囚人の多さ(成人の100人に1人が収監されている、1970年の4倍)
(3)経済、社会、文化の権利
米国は世界一裕福な国ではあるが、経済、社会、文化に関する米国人の権利は年々悪化している。失業率、貧困人口、飢餓人口の増加。医療保険を持たない人も年々増え続けている。
(4)民族差別
民族差別は米国社会に根を下ろし、社会生活の各分野に浸透している。差別されているとの回答が各種調査で軒並み50%越え。マイノリティの失業率、貧困率の高さ。
(5)女性と子どもの権利
セクハラの横行、女性CEOの少なさ、女性博士の少なさ、児童の貧困。4人に1人の児童が飢餓の問題に直面している。暴力を振るわれた子どもは年300万人以上。
(6)他国の人権を侵犯
イラク戦争、アフガン戦争で多くの市民を殺害した。ウィキリークス好評のデータによると、イラク戦争で死亡した28万5000人のうち、63%が一般市民だった。グアンダナモ基地に象徴される"テロリスト"の勾留と拷問。
米国批判の報告書が簡単に書けてしまう理由
「米国が世界各国の人権状況をえらそうに批評するなら、オレがおまえの点数を評価してやんよ!」という中国の心意気(?)はわからないでもないというか、まー「米国は理想の国、民主主義が極まって人々は地上の楽園で暮らしている」と思っている人ってそんなにいないとは思いますが。
で、中国の『米国人権記録』を読んでいて印象に残ったのが、大量の統計を引用しているのですが、それは米メディアや米政府、NGOが発表したデータを使っているということ。米国は理想の国ではないにせよ、体制批判の力がちゃんとあって、その成果は中国政府が使えるほどにオープンになっている。
米中の報告書を比べて見ると、その差は歴然。中国に何が足りないか、よくわかってしまいます。