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無人島の個人所有権解禁=その思惑とは―翻訳者のつぶやき

2011年04月16日

無人島の所有権開放の思惑

国家海洋局は4月12日に記者会見を開催し、中国国内で個人、企業が開発・利用可能な無人島の第1次リストを公表しました。リストで公表されたのは遼寧省、山東省、江蘇省、浙江省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、海南省に属する計176の無人島で、これらの無人島に関しては、個人、企業に関わらず土地使用金を支払えば、一律土地使用権を取得することが可能となります。


island in the sun / Martin Lopatka


ただご存知の通り、中国では土地は国のものと定められています。取得といっても、あくまで地代に当たる「土地使用金」を支払って、「土地を利用する権利」を得るにすぎません。使用年限である50年を過ぎれば、返還しなければならないのは、他の土地と同じです。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。

一方、国務院や省政府の承認を受ければ、外国人、外資企業であっても無人島購入が可能です。つまり、お金があれば中国人であっても、外国人であっても期限付きではありますが、無人島の主になることが可能だというわけです。


解放されたのはごくごく一部

一見政府の太っ腹のように見える解禁ですが、中国政府が把握している無人島は現在6900島もあります。そのうち900余りの無人島はすでに農牧・漁業、工業、交通輸送、公共サービス(軍事なども含まれると思われます)のために利用されています。今回の土地取得が可能となった無人島は176ですからほんの一握りだということが分かります。

呂彩霞・国家海洋局海島管理弁公室主任は新京報の取材を受け、「他国との領土紛争が存在する島や省間でどちらに属するか異論が存在する島、面積が0.5平方キロに満たない島は取得できない」と明言しました。言い換えれば、「注目されている尖閣諸島や南沙諸島、西沙諸島など微妙な場所にある島については、中国庶民であれ、外国人であれ近づかせない」という意味なのでしょう。この点が、竹島に一般人を住まわせて自国の領土の既成事実化を図ろうとする韓国と少々異なっているといえるのではないでしょうか。


経済効果の望みは薄い


呂主任は、「無人島を購入した人は個人で楽しむようなことはせずに、モルジブみたいに一般に開放して、レジャー施設のようにして、みんながこの共有資源を享受できるようにすることを希望する」と表明しました。中国政府としては無人島の資源を利用して経済振興を図り、中国の国家経済の更なる発展を目指したいというのが今回の政策の大きな目的だということなのでしょう。

ただ、この無人島の開発利用で、経済効果が生み出せるかどうかは微妙だと考えているメディアは多いようです。京華時報は、「現在わが国の多くの無人島はすでに勝手に占有されていたり、売買されている」と報じています。しかも無人島は土地や自然条件が過酷なケースが多く、「開発には、同じような面積で内地と比べると3倍の資本が必要」だそうです。

また、「これらの無人島に手を出すのは多くの資金を持ち合わせていない中小企業に限られており、土地開発の特徴と資本投資の特徴がマッチしていない」としています。そして京華時報は、現在無人島の開発で収益を見込めるのは「土地投機目的か、企業のイメージ戦略目的である」と分析し、「このような現状(の打開)は、政府の島しょ開発に対する位置づけと計画にかかっている」と結論付けています。

無人島開発に関する政府の目論見と現場の現状。これらがしっかりと一致しない限りはこの政策が見掛け倒しになることは間違いないでしょう。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。



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