中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年04月15日
本当のところ「牛肉膏」ってなんなのさ?
「牛肉膏」の成分が知りたい!と思って、各メディアのニュースを漁ってみたのですが、なかなか成分が書いているところは出てこない。出てくるのは「慢性中毒を引き起こし、胎児の奇形、さらにはがんを誘発する可能性もある」との専門家のコメントばかり。
このコメントを読むと、「うわっ、毒性たけー」とビビる人もいるでしょうが、早合点は禁物です。たいていの物質は摂取しすぎれば中毒を起こしますし、発がん性が疑われる物質もまあ星の数ほどあるわけで。上述のコメントはなんかヤバゲなものが出てきた時の常套句。「どういう効果があるかわからないけど、体にいいものではないんじゃね?」ぐらいの意味に取ったほうがいいかと。
で、15日付世界商業報道に「牛肉膏」の成分についての記述が。当局専門家によると、「牛肉膏」は一種の複合添加剤。つまりいろんな薬品をごちゃまぜにして、牛肉化するのに最適な調合を実現しているようです。アミノ酸、イノシン酸、グアニル酸、化学調味料、タンパク水解物といった、ごくごく一般的な食品添加剤の名前が並びます。
たいていの物がそうであるように、摂取しすぎはもちろんよろしくないのですが、これならそんなに体に悪いものではないのでは……。もちろん、「この怪しげな添加物、正規の工場で作ってないのでは」とか「成分表に書いていないナゾの危険物入ってるかも」という不安はあるかもしれませんが、少なくとも現在、健康被害は報告されていないことから考えても、「ただちに危険がある」ような物質ではないんじゃないか、と。
「危ない中国食品」ネタといえば、日本でもヒキの強いネタですが、実際に毎日中国食品を食べている中国人にとっては、もっと気になる情報。というわけで、生き馬の目を抜く中国メディア業界では、こうした怪しげな物を見つけては、「発がん性があるかも」的なコメントをつけて報道するという状況です。「KINBRICKS NOW」で取り上げた記事だと、「一滴香」がほとんど同じような内容ですね。
(過去記事「香り高き中華スープはたった一滴の化学薬品で作られていた=「一滴香」問題に中国衛生部がコメント」参照)
ミートホープVS牛肉膏
別の肉への変身と言えば、日本にも大家がいます。2007年、日本中の話題をかっさらった北海道の食肉加工業者ミートホープです。
牛肉100%の挽肉の中に豚肉、鶏肉、パンの切れ端などの異物を混入させて水増しを図ったほか、色味を調整するために血液を混ぜたり、味を調整するためにうま味調味料を混ぜたりしたことなどが判明個人的にはウサギ肉に牛の血や脂を混ぜることで、牛肉化できるという技に衝撃を受けました。今回の「牛肉膏」も牛肉化という意味では同じジャンルに属するわけですが、
ウィキペディア日本語版「ミートホープ」
・ミートホープは自社で開発した牛肉化技術を他社に提供しなかった。と正反対のビジネスモデルをとった点が気になるところ。これってなんだか日中企業の縮図のようにも思えます。フランチャイズ化、大規模化、ライセンス化でともかくビジネスを急速に大きくしようとする中国企業と、他社に優越する技術力をひたすら磨き続ける日本企業といった対比に似ているような……。
・牛肉化するために最適化された添加物調合「牛肉膏」を大量生産。末端向けに販売。