中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年04月18日
論文によれば、穀物粥などの大手メーカーの乳児用補助食品を検査したところ、最大で1キログラムあたりヒ素33マイクログラム、鉛13マイクログラム、カドミウム11マイクログラ
ムが検出された。食品規格委員会(CAC)はキログラムあたりヒ素200マイクログラム以下、鉛200マイクログラム以下との基準値を定めており、検出された量は大幅に下回っている。
しかし、デイリーテレグラフの記事は、ヒ素は少量でも発がん確率を増やすとの専門家の意見の紹介。こうした補助食品を1日に2回与えることで、乳幼児が摂取するヒ素の量は母乳だけを与えた場合に比べ、50倍に増えると指摘している。
同問題を中国メディアも報道、注目を集めている。中国もCAC同様、200マイクログラムを基準値としているが、中国メディアは「33マイクログラムを危険としたスウェーデン研究者の指摘と比べ、中国の基準値は高すぎるのでは。国際メーカーは欧州と中国で異なる基準値を適用しているのではないか」と主張。名前が上がった大手メーカー・ネスレが否定する声明を出すなど騒ぎは広がっていた。
中国疾病予防管理センターが発表した想定問答集では、中国の基準はCACと同等、カドミウムに関してはより厳格であると指摘。補助食品から検出された重金属が基準値を大きく下回るものであることを明らかにしている。
また、「母乳のみで乳幼児を育てたほうがより安全なのか」という想定質問については、「中国では
6か月以下の乳児については母乳のみで育てることを推奨しているが、それ以後については母乳のみでは子どもの成長に十分ではない。専門家の指導に基づき、
国家基準に合致した乳幼児用補助食品を与えるべき」と回答している。
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メラミン汚染粉ミルクという死者まで出す事件があったこともあり、中国人の食品安全に対する意識、とりわけ乳幼児向け食品に対する意識は高まっている。その一方で、特ダネを狙うメディアが過剰に煽るケースも少なくない。
今回の件については、デイリーテレグラフに「現在の基準値200マイクログラムには合致しているが、もっと基準値を引き下げるべきだ」と報じているのに対し、「中国の基準値はぬるすぎる」「海外メーカーはダブルスタンダード」と報じ、読者を混乱させている。
「海外メーカーは中国人には劣悪製品を売りつけているのでは」という「中国人は虐げられている」意識とも結びつけられたことも注目するべきポイントだろう。先日、中国のネットには「日本漁船が放射性物質に汚染された魚を売りつけに中国に向かっている」とのデマが広がったが、食の安全に関する自衛意識と海外への警戒感が結びついて深刻な風評被害を生み出すというケースは、今後も繰り返されることになるだろう。