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2011年04月21日
昨日の午前10時から始まったボイコットは、上海市に登録がある業者の6割に当たる千人前後が集まる大規模なものになりました。当初集合場所と
なっていた宝山区物流園区は防警、公安などにより午前中に封鎖されて入れなくなったため、午後からは浦東高橋港区に場所を移して継続。
参加した運転手の1人、劉さんは「政府に出てきてもらいたいだけだ。ケンカしに来たんじゃない」と話しているものの、例によって上海市機関紙の解放日報を筆頭に、現地メディアは取りあえずスルー。ただし財新網はしっかり報じたみたいで、転載先の新浪網なども一斉削除されたものの、削除忘れを発見しました。
・上海市コンテナ運転手が集会運送費値上げ要求(2011/4/20 財新網)
財新網によると、2010年末の燃料値上げまでは、月収4000元(約5万1000円)から5000元(約6万3100円)程度が得られていたとのこと。その後、度重なるディーゼル油値上げにもかかわらず、運送費は値上げされなかったため、手元にほとんど残らなくなっている状態だといいます。
ネットに書き込まれた未確認情報によれば、死者3人、負傷7人(警察側にも負傷者数名)がでたとのこと。本当ならば、兪正声・上海市長にもとばっちりが来そうな予感がします。少なくとも流血は見た、連行されるのも見たとの目撃情報が複数から得られており、ボイコット参加者と警官隊と衝突があったことは事実と言えるでしょう。
また、強制立ち退きの被害者も集会に参加したと報じられてとのこと(博訊)。警察当局は6000から7000名を動員したと報じられています(RFA)。集会参加者も、最終的には1000人では済まなかったのではないでしょうか。
「燃料の値上げはきっかけ。政府が出てきて港湾側の費用徴収が透明化されればと思う」。場所は変われど、構造はどこも同じなのですね。上海市や党中央がこれらの声にどう応えるのか、対応を待ちたいと思います。
政局とストライキの関係は?
ここからは余談になります。昨日のツイートを整理しただけです。
上海市のトップを務める兪正声は、80年代に兄が米国に亡命して政治的に遠回りを余儀なくされています。太子党時代到来と共に、来年の党大会は年齢的に政治局常務委員になれる最後のチャンス、瀬戸際なのであります。兪正声は来年67歳。常務委員の定年は68歳ですから、まさにギリギリ。常務委員になれれば5年政治生命が延命できますが、昇格がかなわなければ政治局委員の定年(63歳)に引っかかるので引退は避けられません。
どこでもありそうな雑費の徴収を理由にしたボイコットが、他でもない上海市で発生したというのは興味深い点です。王岐山は常務副総理、薄熙来は政法委書記、李源潮は紀律委書記にほぼ内定していますから、兪と同じく引退の瀬戸際に立っている劉雲山か張徳江あたりか、太子党が邪魔な共青団の差し金か、と色々考えられますねえ。
それらを差し引いても、対応次第では兪正声が上海市トップのまま無事に引退できるかも怪しくなるわけで。党大会を来年に控え、面白そうな動きであります。
*Chinanews注記
削除された財新網の記事によれば、午後の時点でトラック運転手の多くは解散したとのこと。しかし運送料金が変わらない状況で、ストライキなり抗議運動が収まるとは思えません。今後の推移を見守りたいと思います。ビジネス関係では、上海港(他の港湾でもそんなに状況は変わらないと思いますが)のストライキ・リスクを認識しておく必要がありそうです。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。