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2011年04月22日
温家宝総理の発言
このような中、温家宝総理が14日に中南海紫光閣で国務院参事、中央文史研究館官員と懇談した際に行った講話を新華社が配信しました。
懇
談会の席上、温家宝総理はこれらの品質問題に「わざわざ」触れ、「これらの悪質な食品安全事件は、信頼の喪失、モラルの堕落がすでにこれほどまでに深刻な
段階にまで到達していることを十分示している。もし国民の資質の向上、モラルの力がなければ、真に強大な国、尊敬を受ける国になることは絶対に不可能であ
る」と強い口調で非難しました。
その上で温家宝総理は、「法律法規を整備し、モラルを持った企業と個人が法律による保護、社会による尊重を受け、法律・規律に違反して、モラルが堕落している者が法律による制裁、社会から唾棄を受けるようにしなければならない」と訴えました。
メラミン含有量などの規定を厳格化
ここからでしょうか、メディアで急に食品問題の対策に関する報道が多くなります。
大河網の報道によると、衛生部など5部門は20日に公告を発表し、「乳児用の食品に含まれるメラミンの含有量を1キロ当たり1ミリグラム以下、そのほかの食品におけるメラミン含有量を1キログラム当たり2.5ミリグラム以下に制限する」と規定しました。
食品に故意にメラミンを混入させることはすでに明文によって禁止されています。今回の通達は環境的要因や包装によるものなど、不可抗力で混入してしまったものに対して規定するもので、より厳格化しているといえます。
同時に、乳児用食品の容器によく使われていたビスフェノールAの使用も禁止されることになりました。
ビスフェノールAは樹脂の材料に使われる化学物質で、先ごろ、乳児の早熟化の現象を引き起こすとして中国国内で問題になっていました。
監督管理強化の通達
さらに4月21日、新華網の報道によると「食品に対する違法添加行為を厳しく取り締まり、食品添加物に対する監督管理を適切に強化することに関する通達」が国務院弁公庁から発表され、食用とされない物質を食品に添加する行為や食品添加物以外の化学物質を添加することを厳禁にするとの通達が出されました。さらに違法添加行為に対して各地域や各部門が監督を強化するよう呼び掛けています。
李克強国務院副総理も同日、省・市・県の幹部とテレビ回線をつないで会議を行い、食品添加物に関する監督責任を地方政府が適切に担い、責任ある態度で化学物質の違法使用を防がなければならないと呼びかけました。
求められる企業モラルと「信頼」
食品の品質に関しては中国では「食品安全法」という法律があり、今回の通達は法的拘束力があるわけではありません。しかし政府がこのほどまでの頻度で食品品質維持を呼び掛けたのはやはり、これだけ多発する事件で揺らいでいる中国食品の安全性に対する国内外の信頼を早く回復したいとの気持ちがあったからでしょう。
事実14日夜の中央テレビでは、温家宝総理が同日に中南海で国務院参事、中央文史研究館官員と懇談した際に行った講話の内容について報じた後、中央テレビの評論員は「実のところ、モラルを重視し、信頼を守ることは市場経済の本質的な要求である。市場経済は、人、企業、社会の間に利益の紐帯を確立することである」と分析しました。
また評論員は「さまざまな価格的な要素、経済的な要素によって互いの関係を形成しているが、この紐帯の確立と擁護の過程で、道徳も、信頼も重要な要素となる。企業には合理的な利益を形成するには必ず信頼を重視しなければならない。同時に企業が個人、社会の責任に直面したときに、同時に最も基本的なモラルの最低ラインを維持しなければならない」と訴えました。
その上で評論員は「私たちは企業生産の全過程に触れることはできない。企業が生産の過程で、モラルを持っているのか。信頼が置けるのか。これには、企業が自身を律するだけでなく、同時にわれわれ社会全体が企業の自律を促すメカニズムを確立しなければならない」と論じました。
モラルと「人を信じること」。これは中国の企業文化の成長にとって避けては通れない高い壁になっているようです。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。