中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年04月23日
実は、ロシアでは人の健康を絶対にほめてはいけないのです。なぜならば「健康をほめられた人は決まって病気になる」と思われているからです。だから、先生の言葉は私にとって「災いを呼ぶ言葉」にしか聞こえませんでした。
案の定(?)、ゆうくんはインフルエンザにかかってしまいました。ぐったりしている我が子の熱を測っているとき、タチアナはどういうことを考えていたと思いますか?
正解は、「あんなことを言うから・・・」と、先生を恨んでいたのです。
いかがですか?日本人はインフルエンザを先生の言葉のせいにしたりするのでしょうか?
頭で考えれば、保育士さんはどこも悪くありません。それぐらい私もわかっています。しかし、私に限らずほとんどのロシア人は上記の状況で保育士さんを恨むと思います。
そのときの先生の行為はロシア語でсглазить言います。早とちりで誰かをほめたり、何かを言い切ったりすることで、その逆の事態を招いてしまうという意味です。
「健康をほめられた」→「病気になった」
「事故しないことをほめられた」→「事故に遭ってしまった」・・・
第三者の言葉がこうした「被害」を招くこともありますけど、自分の口で災いを呼んでしまうこともあります。
「ロシアは治安が悪いとみんな言うけど、僕は2年近くここで暮らして何ともなかった」と、うちのパパはたまに言おうとする。パパがこのセリフを言い終える前に慌てて止めてしまうタチアナ。まだまだロシアで暮らしているわけだから、こうした早とちりは絶対口にしてはいけないのです。
ちなみに、今回ここでこの話を取り上げたきっかけは、パパにсглазитьというさきほどのロシア語の意味を説明するようにロシア人作業者から頼まれたことです。その作業者の使っている設備は今までよく壊れましたけど、最近やっと順調に動くようになりました。そして、パパは喜んで「すごいね!壊れなくなったね~」と連発したそうです。
ところが、ロシア人の目から見ればそのセリフは完全にNGなんです。パパの言葉を聞くたびに「機械が壊れてしまう!!!」と、作業者は不安に駆られていたにちがいない。そして、いてもたってもいられなくなり、私のところに駆け込んだのだと思います。
…このような状況の中で喜びを表現したければ、「今のところ大丈夫だね」と控えめに「今」に限定した表現にすればいいのです。
ちなみに、テスト中、悪口を言われている人はいい成績をとるという話もあります。もうだいぶ昔のことですけど、私も試験に行くとき、ругайте меня(私の悪口を言っててね)といつも家族にお願いしていました。この場合の発想は上記の「健康」などとは正反対です。つまり、悪いことを言われている人にはいいことがあるということです。受験生のいるご家庭で一度試してみてください。
ただし、受験生以外の人について悪口を言ったら怒られますので、その点だけはくれぐれも気をつけてください。
*当記事はブログ「ロシア駐在日記」の許可を得て転載したものです。