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2011年04月26日
なぜ牛乳に塩を入れたのか?のナゾ
亜硝酸塩は工業塩や食品の発色剤として使用される物質だが、過剰に摂取すると中毒症状を示し、最悪の場合には命にかかわる深刻な被害をもたらす。中国では、コスト削減のために食塩より安い亜硝酸塩を使うお店が後を絶たず、中毒事件が多発している。
しかし、今回は牛乳に含まれていたというのがなんとも不思議な点だ。牛乳には塩も発色剤も要らない。亜硝酸塩を入れる必要はないはずなのになぜ?!と思っていると、なんとなんと、捜査の結果、商売敵による嫌がらせだったことが判明した。以下、捜査結果については2011年4月20日付甘粛日報を参照した。
予想外の犯人
当初、疑われたのは生産者である馬文選。しかし、中毒者が飲んだ牛乳以外からは亜硝酸塩が検出されず、容疑は晴れた。亜硝酸塩はエサに混ぜられるなど生産過程で混入したものではなく、採乳後に投入されたことが明らかとなったのだ。
代わりに容疑者として浮上したのが呉広全だった。馬文選の牧場がある馬坊村には、もう1人の牧場主がいる。それが呉。2人は2010年9月に共同で同村放牧場を借り受け、半分ずつ利用していた。しかし、牧場経営後、ささいなことで口論を重ねていたという。
それだけではない。最大の問題は2人が商売敵の関係にあることだった。当初、商売を優位に進めていたのは呉。馬坊村で牛乳を購入する20世帯余りのうちほとんどを顧客としていた。しかし、その後、馬文選が巻き返しに成功。今年の旧正月明けの時点で、呉の顧客は7世帯にまで減っていた。ビジネス絶好調の馬は、自分の牧場の牛乳では足りない状態となっていたが、不足分を呉からは買わず離れた別の牧場から購入していた。
取り調べを受けた呉は当初、容疑を否認したが、自宅から亜硝酸塩の残りが見つかったことでついに観念し、容疑を認めた。馬文選とのいさかいが許せず、食中毒事件を起こすことで商売を邪魔してやろうという動機だったという。
恐怖の地産地消
牧場直送の新鮮な牛乳。作り手の顔が見えることもあって、紙パックに入った大手メーカー製品よりも安心に思えるのだが、よもやケンカが原因で毒が入っているというサプライズがあろうとは……。狭い世界での商売だけに、あるいは被害者の中には呉の知り合いもいたのではないだろうか。腹いせにちょっと嫌がらせしてやろうというぐらいの気持ちだったのかもしれないが、大惨事となってしまった。
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