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【中国食品】「モッタイナイ精神」が生み出したメラミン汚染粉ミルクという亡霊

2011年04月27日

痩肉精、染色マントウなどの問題が騒ぎとなっている今、メラミンの「亡霊」が再び姿を現した。先日、重慶警察は内モンゴル自治区よりはるばる重慶にまで運ばれてきた「問題粉ミルク」26トン余りを押収した。違法販売企業は市場価格よりもトン当たり1万元(約12万5000円)安い価格を武器に小売店を攻め落とし、「問題粉ミルク」は子どもが大好きなアイスクリーム市場へと流れ込んだ。

重慶で基準値を超えたメラミンを含む問題粉ミルク26トン超を押収」(新華社、2011年4月27日)


这送的是啥东东?不会是奶粉吧?妈妈说还是让我吃奶粉,这个做备份! / shanghaiart


というわけで、「エアロビ豚」「染色マントウ」「工業塩牛乳」と大型食品問題が続く中、“本命”が帰ってきました。2008年に中国全土を混乱に陥れた「メラミン汚染粉ミルク」の復活です。


メラミン万里の旅

4月26日、重慶市公安局はメラミン汚染粉ミルク26トンの押収を発表した。押収自体は3月26日に実施されていたもので、1カ月後の遅い発表となった。すでに関係者5人が警察に拘束されており、うち3人は刑事拘留の手続きが取られている。

このメラミン汚染粉ミルクが重慶にたどりついた経路がちょっと興味深いもの。

・内モンゴルの酪農家が原料乳を生産。タンパク質たっぷりに見せかけるためメラミンを投与。

・買い取った乳製品メーカー・内モンゴル自治区扎賚特旗威力斯乳業有限公司が粉ミルクを生産。

(2008年のメラミン汚染粉ミルク騒動で売れない状態に。本当は廃棄しなければいけないのだが、“何かに使える”かもと倉庫に放置)


・2009年10月、借金のかたに広西八旗商貿有限公司が所有権をゲット。

・2011年3月、重慶喜達食品有限公司がアイスクリームの原料としてお買い上げ。

27日付南方週末を参照。青字は前後関係から筆者が推測したもの。

*問題の粉ミルクはおそらく2008年のメラミン汚染粉ミルク事件以前に生産されたものだと思われる。酪農家からメーカーが購入する時点でメラミン混入をチェックするようになったこと、メーカー側はメラミン汚染原料乳をいまさら生産するメリットが薄いことが理由だが、大番狂わせでいまだにメラミン汚染原料乳の生産が続いていたらそれはそれで驚きではある。
北の内モンゴル自治区から南の広西チワン族自治区を経由しての重慶入り。「メラミン万里の旅」って感じでしょうか。


廃棄されていなかった毒粉ミルク


2008年のメラミン汚染粉ミルク事件当時、問題製品はすべて廃棄されたことになっており、連日テレビでは地面に投げ捨てられる牛乳や焼却処分された粉ミルクの映像を流していましたが、実際にはまだまだ品物が残っているようです。

南方週末の報道によれば、原料乳価格の高騰が続く中、安価なメラミン汚染粉ミルクはよく売れているのだとか。正規の粉ミルクならばお値段はトンあたり3万元(約37万5000円)以上。広西八旗商貿有限公司は当初、トンあたり5000元(約6万2500円)でさばこうとしていたそうで、市価の6分の1という激安っぷり。ちなみに重慶喜達食品有限公司は2万2000元(約27万5000円)でお買い上げになったそうで……。喜達はメラミン汚染を知らずに買ってしまった被害者という可能性もありそうですが、そのあたりは報道されていません。

製造企業が購入したメラミン汚染粉ミルクは、監視がゆるい自治体で実際に使用されているのではなかろうかというのが南方週末の見立てです。乳児は毎日、粉ミルクばかり摂取しているため、腎臓障害という健康被害につながりましたが、たまに食べるアイスクリーム程度では目に見える形での健康被害はない、すなわち知らずに食べている人が結構いるという可能性は結構あるのではないか、と。

それにしても倉庫代だってかかるだろうに、「いつかは売れるはず」とメラミン汚染粉ミルクを保管し続けていた中国企業の根性恐るべし。「中国版モッタイナイ精神」と名付けるべき、ですかね。

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